これが国民年金45年加入になった場合に、制度見直しをプラスに転じさせる方法もある。雇用延長などで“会社勤め”を長く続けるのだ。
政府は高年齢者雇用安定法などを改正して希望する社員全員の65歳までの雇用機会提供を義務化し、70歳までの雇用確保の努力義務を課した。そのため、60歳定年の後も、雇用延長などで65歳や70歳まで働くサラリーマンが年々増えている。
ところが、現行制度では、そういう人たちは年金で損をさせられているケースが多い。厚生年金に40年以上加入している人の年金額は、報酬比例部分(2階部分)は加入期間が長いほど増えていくが、1階部分の基礎年金(国民年金に相当)の金額は加入期間40年で満額になるため、保険料を支払ってもそれ以上増えない。その間、給料から天引きされる保険料のうち、基礎年金分の保険料が“払い損”になるケースもある。
国民年金45年加入になると、“払い損”が解消され、雇用延長で働けば加入期間45年まで基礎年金の受給額も増えていくことになる。
「勤続40年、現役時代の平均年収400万円台」のサラリーマンが60~65歳も会社勤めを続けたケースでは、年金合計額は月14万円から月15万7500円に増える計算だ。北村氏が語る。
「年金45年加入時代に60歳定年でリタイアすると、年金受給が始まる65歳までに夫婦で200万円保険料を負担することになりかねませんが、雇用延長などで65歳まで厚生年金に加入して働けば給料から保険料は天引きされるものの、保険料の半分は会社が負担するし、払い損も解消されます。今後は、少なくとも65歳まで企業で働くのが人生設計のスタンダードになっていくのではないか」
※週刊ポスト2023年4月7・14日号