もともと日本は観光資源が実に豊富だ。私は休日・休暇のたびにオートバイや車であちこち旅しているが、美しい景色や美味しい店が全国各地に山ほどある。
問題は、それらの観光資源を持っている町や地域に、観光客を呼び込むための「構想力」があるかどうかだ。その点で注目されているのが、『スキー場は夏に儲けろ!』(東洋経済新報社)の著者・和田寛氏が実践した改革である。和田氏は、スキー客が激減して衰退する一方だった白馬岩岳を数々の斬新なアイデアで四季を通じて楽しめる山岳リゾートに転換し、来場者を大々的に増やしたのである。
白馬岩岳と同様に「隠れた資産」「埋もれている宝物」を持っている観光地は非常に多い。それを掘り出して活用するプロデューサー的なリーダーが必要なのだ。政府はバラ撒き策を続けるより、そうした構想を支える仕掛けを作るべきだろう。
【プロフィール】
大前研一(おおまえ・けんいち)/1943年生まれ。マッキンゼー・アンド・カンパニー日本支社長、本社ディレクター等を経て、1994年退社。現在、ビジネス・ブレークスルー代表取締役会長、ビジネス・ブレークスルー大学学長などを務める。最新刊『第4の波』(小学館)など著書多数。
※週刊ポスト2023年4月7・14日号