ただ、今回の救済処置や資金供給というのは、FRBが現在行っている金融引き締めと逆行する「緩和的な処置」です。もしも、この緊急処置によって金融システム不安を避けられたとしても、インフレがさらに加速するリスクが高まります。だからと言って、インフレ抑制を優先して利上げを継続、または加速させれば、再び金融不安が出てこないとも限りません。
インフレ、金融不安のそれぞれで対極的な対処が求められる以上、舵取り次第では混乱が発生するリスクが残っていると考えられます。
ハイテク株と中小型株で明暗
アメリカ株の主要指数で、3月の月間のパフォーマンス(執筆時点)を比較してみると、ナスダックが前月末比で+4%を超えています。さらにナスダックに上場する主力100銘柄で構成されているナスダック100については+6%を超えており、特に大型のハイテク株の上昇が目立ちます。その一方で、中小型株で構成されるラッセル2000は▲8%と、大型ハイテク株と中小型株で明暗がくっきりと分かれています。
今回のアメリカの中堅銀行の経営破綻連鎖を機に、銀行に対する規制の強化など、多くの地方銀行になんらかの影響が及ぶ可能性は高いでしょう。となると、地方銀行の融資を活用している中小企業にとっては、今後の資金調達に不透明感が残ります。
その一方で、GAFAMのような大型ハイテク企業にとっては、事業から生み出すキャッシュフローが潤沢にあり、規制強化の影響は少ないように思います。ほかには、今回の金融システム不安により、早期利上げ停止への期待が高まって長期金利が低下したことも、大型ハイテク株への買いへつながっているのかもしれません。
FRBは難しい舵取りを強いられる
このように、大型ハイテク株買い、中小型株売り、長期金利低下が進んでいる状況を踏まえると、「インフレ」「金融不安」の2つのリスクがともに起こらないことを前提に、市場での織り込みが進んでいるように見えてきます。
早期の利上げ停止といった緩和的な処置によって、金融システム不安が解消につながり、その先もインフレも落ち着いてくれれば株式市場にとって最も好都合のシナリオでしょう。しかし、利上げ停止などの緩和的な処置はインフレリスクを高め、利上げ加速などの引き締め的な処置は金融不安を高めます。