就職や進学などがある春は引っ越しシーズンでもある。業者間の空きトラックや引っ越し案件のマッチングサービスなどを手掛けるリベロによると、2024年4月に始まるトラックドライバーの時間外労働規制強化を前に「今年の繁忙期から一部では受注件数を減らしたり、長距離引っ越しの対応を無くすといった対策を始めており、作業件数の減少が明らか」だという。今春は、希望する日程・予算内で引っ越しができないなどの“引っ越し難民”が発生する可能性も十分考えられる。
そうした状況下で、少しでも引っ越し代を節約しようと考えたために、逆に困難に直面するケースもあるという。フリーライターの吉田みく氏が、この春、新居に引っ越しをした30代主婦に話を聞いた。
* * *
今春、念願のマイホームを購入し、東京都から埼玉県への引っ越しを終えた専業主婦・ナオミさん(仮名、38歳)。しかし、新居に移るまでの道のりは平坦ではなかったという。
「この春の子供の小学校入学に合わせて、4000万円台で購入した新築戸建てに引っ越すことが決まりました。引っ越し業者に見積もりを依頼したら『総額20万円』と言われたのですが、『それでは我が家には高すぎる』と。
そこで少しでも引っ越し代を安くしようと、大型家電だけを業者に依頼し、運べる荷物は自家用車で運ぶことに決めたのです。10万円ほど節約することができたので夫も喜ぶと思ったのですが、『高くても専門業者に頼んだほうが確実じゃない?』『自家用車で何往復もするの?』と文句ばかりで、うんざりでした……」(ナオミさん、以下同)
以前の住まいがある東京から埼玉の新居までは、車で片道1時間ほどかかる。ナオミさん家の車は7人乗りのミニバンタイプではあるものの、荷物の量を考えれば最低でも3往復は必要になる見込みだった。荷物を積んで、降ろして……という前後に必要な作業時間を考えると、最低でも2日はかかる。
車での往復時間は高速を使えばそれぞれ20分くらいは短縮できるそうだが、ナオミさんとしては「時間をかけてでもできるだけ費用を抑えたい」という考えだった。
「でも夫は『時間の無駄。やるなら一人でやってほしい』と言い放ったんです。『じゃあ20万円で引っ越し業者に依頼したほうがいいの?』と問うと、『繁忙期だし仕方がないんじゃない?』と言い返してきました。でもその金額は、食費から何から、生活費を切りつめないと捻出できません。住宅購入時に多額のお金を使ったため、貯金は30万円を切っているんです。夫だって知っているはずなのに、一向に私の意見には賛同してくれません」