近年、リモートワークの普及や生活環境の多様化を背景に、地方移住や二拠点生活のための家を求める人が増えている。塩漬け状態の家があったり、引っ越しを考えている場合、売りに出すのも手だ。
ただし、その場合は税金に注意したい。税理士の板倉京さんが指摘する。
「買ったときよりも安く自宅が売れたら非課税ですが、売って儲けが出ると高い税金がかかります。例えば、2500万円で購入した自宅が5500万円で売れて3000万円の利益が出たら、所有期間5年超なら約600万円、5年以下なら約1170万円も税金をとられます。ただし、住まなくなってから3年後の12月31日までに売却するなどの条件を満たすと、3000万円の儲けまで税金がかからない特例がある。いずれにせよ、動き出しが早いに越したことはありません」
とはいえ、大きなきっかけがなければ売却に踏み切るのは難しい。
「検討すべきひとつのタイミングは、子供が巣立ったとき。夫婦だけでは広すぎる家の場合、自宅を売却してコンパクトな家に移る手があります。特に電気代が急騰する昨今、広くて気密性が悪い住宅の場合、無駄な光熱費がかかる一方、スペースが限られるマンションは気密性が高く光熱費が安くなる傾向に。戸建てより手狭だから物の整理も進み、管理が行き届くというメリットもあります。個人的には、高齢者は戸建てを手放してマンションに住む方がお得だと感じます」(ファイナンシャルプランナーの丸山晴美さん)
ただし、注意すべきポイントもある。丸山さんが続ける。
「家を売りやすくするためにお風呂やトイレなどを大規模に工事するリノベーションを行う人がいますが、それは悪手。お金をかけたのに家が売れなかったら悲惨です。不動産は“すぐに売れない”リスクと常に隣り合わせ。利益が出るかわからないものにお金をかけるのは避けた方がいい」
自宅を手放すときは、引っ越しにも住み替えにもお金がかかる。そうしたコストや、ダウンサイジング後の生活費を見据えて売却を判断したい。ファイナンシャルプランナーの森田悦子さんは「余裕を持った売却」を呼びかける。
「自宅を売却する際は1つの不動産屋に頼むより、複数の業者で見積もりを取ると高く売れやすい。不動産は早く売ろうとするとどうしても売値が安くなるので、心にも時間にも余裕を持って準備することが大事です」