厚労省の年金財政検証は5年ごとに行なわれ、前回の2019年検証時点の出生率は全国平均1.45、東京は1.24だった。それが2021年の出生率は全国平均で1.30まで下がった。今まさに年金半減の最悪のシナリオに向かっているのだ。年金制度に詳しい“年金博士”こと社会保険労務士の北村庄吾氏が指摘する。
「ニッセイ基礎研のレポートは年金崩壊が迫っている現実を示している。公的年金は、現役世代が支払う保険料で引退世代に年金を支払うという世代間の支え合い(賦課方式)で運営されている。1人の年金を生産年齢人口(15~64歳)が何人で支えているかをみると、1960年頃は約11人で1人を支えればよかったが、現在は2人で1人、少子化が改善されない限り、将来的にはほぼ1人が1人を支えることになる。引退世代の年金が20万円だとすると、保険料を上げてもそれを現役世代1人で支えるのは無理です。だから年金を大幅に減らすしかない。
同レポートでは最悪のシナリオが『年金水準5割減』となっているが、それで済めばまだましなほうかもしれません。少子化が進む社会では、世代間で支え合うという現在の年金の仕組みはもう成り立たないわけです」
いまのまま少子化が進めば、日本の年金制度が崩壊する未来が待っているのだ。
※週刊ポスト2023年4月21日号