出産費用の補助増額や育児休業手当の増額も、子育てによる女性の「機会費用の損失」を全くカバーできないという。
「最新の研究によれば、大卒女性が子育て期にキャリアを中断することによる逸失所得は生涯で2億円、高卒女性でも約1億円にのぼる。失う所得の大きさを考えると、育児休業給付などをいくら増やしても焼け石に水。日本でも近年、幼児の教育や医療の無償化が実施されたが、少子化のトレンドが変わったようには見えません」(同前)
給付型奨学金の拡充や保育士の増員も効果は見込めない。
「世帯年収600万円の中間層が、『子どもが大学生になれば奨学金がもらえるから産もう』と考えるでしょうか。ましてや、『保育士が増えるから産もう』などとは考えないでしょう。保育士の増員は少子化対策ではなく、むしろ保育園への補助金を増額し、経営を支援するための産業政策に見えます」(同前)
※週刊ポスト2023年4月21日号