韓国に尹錫悦大統領が就任以降、冷え切っていた日韓関係に変化の兆しがある。今年3月には12年ぶりとなる韓国大統領の単独来日で日韓首脳会談も実現した。これまで「韓国に対し日本は泰然自若として静観すべき」などと一貫して提言していた経営コンサルタントの大前研一氏は、新しい日韓関係を築くために何が必要だと考えているのか。両国の関係を改善させるための「3つの条件」について、大前氏が解説する。
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戦後最悪とも言われてきた日韓関係が正常化に向けて大きく動き出した。
最大の懸案となっていた元徴用工問題の「政治決着」に伴い、韓国の尹錫悦大統領が3月16日に訪日して岸田文雄首相と会談し、両国首脳が頻繁に訪問し合う「シャトル外交」を再開することになったのである。
これまで私は本連載で、韓国に対し日本は泰然自若として静観すべき、と一貫して提言してきた。たとえば、朴槿恵政権の時は「国全体として韓国の態度が根本的に変わらない限り、放っておけばよい」、文在寅政権の時は「日本は無視し続け、文大統領退任までの“末路”を静かに見守るのが、日本にとっての現実解」といった具合である。
私は経営コンサルタントの仕事や講演などで韓国を200回以上訪れて全財閥の経営者と交流し、大学の教壇にも立ってきたが、日韓間の懸案事項は基本的に韓国側の問題だと思う。
もともと韓国には「恨の文化」がある。これは支配者(王権)が目まぐるしく変わり、中国やモンゴル、日本などの異民族に侵略・征服されてきた韓国独特の感情的なしこりや痛恨、悲哀、無常観を意味する朝鮮語の概念だが、戦後はその矛先を日本だけに向け、学校で徹底的な反日教育を続けている。尹大統領以前の歴代大統領は「3.1節」(独立運動記念日)に、必ず日本批判を行なっていた。
しかし、その一方で、実は韓国人の多くは本音では自国が嫌いで日本が好きである。たとえば、韓国の財界人は私と会食して酔っぱらうと、みんな必ず「わが国のほうが悪いんですよ」と自虐史観を語り始める。また、新型コロナウイルス禍が収束した昨年9月以降の国別インバウンド(訪日外国人旅行)客数は韓国がトップであり、親日的な韓国人が多いことは明らかだ。
それでも、今回の日韓首脳会談で歴史問題が本質的に解決したわけではなく、政権が交代すれば再び関係が冷え込む可能性もある。
では、これから日本は韓国との関係をどのように改善していくべきなのか? 大きく3つの条件がある。