1つ目は、旧統一教会(世界平和統一家庭連合)問題だ。同教会は教義の1つとして、教祖・文鮮明の恨を晴らすのは「日本を韓国の植民地にすること」「天皇を自分(文鮮明)にひれ伏させること」としている。そういう反日的で邪悪で危険な宗教団体を放置していることについて日本政府は抗議し、韓国政府は同教会を厳重に統制しなければならない。
2つ目は、前述した反日教育の転換だ。日本の三悪人として、朝鮮出兵の豊臣秀吉、征韓論の西郷隆盛、韓国併合の伊藤博文を特別に取り上げ、伊藤を暗殺した安重根を英雄として教えている。また、日本統治時代に関しても、その「罪」だけを教えている。
だが、客観的に見れば統治時代の「功」もあったはずであり、さらに「漢江の奇跡」と呼ばれる朴正熙政権以降の高度経済成長に、日本政府の無償資金協力や日本企業の技術協力が貢献したことは事実だ。それらについてもバランス良く教えてもらわねばならない。
3つ目は竹島(韓国名・独島)問題である。日本政府は「竹島は、歴史的事実に照らしても、かつ国際法上も明らかに日本固有の領土」と主張しているが、警備隊員を常駐させて実効支配しているのは韓国だ。1952年に韓国が竹島を占拠した時、日本は武力で対抗しなかった。しかし、世界の領土問題は実効支配したほうの勝ちであり、領土紛争が話し合いで解決した例は極めて稀である。武力で取り返さないなら、もうこの問題は棚上げして、日本は竹島を外交上の争点にすべきではないと思う。
以上3条件をクリアした上で日本は韓国との関係をゼロベースで見直し、次のフェーズに進むべきである。
【プロフィール】
大前研一(おおまえ・けんいち)/1943年生まれ。マッキンゼー・アンド・カンパニー日本支社長、本社ディレクター等を経て、1994年退社。現在、ビジネス・ブレークスルー代表取締役会長、ビジネス・ブレークスルー大学学長などを務める。最新刊『第4の波』(小学館)など著書多数。
※週刊ポスト2023年4月21日号