“投資の神様”と“最強のハッカー”の考え
ビットコインと並んで「億り人への道」として人気があるのが「FX(外国為替証拠金取引)」ですが、こちらは為替取引に最大25倍のレバレッジをかけて、人為的にボラティリティを高めています。これによって、大儲けすることもあれば大損することもある投機、すなわち魅力的なギャンブルになるのがFXの特徴です。
そもそも為替取引は、ドルの価値が上がれば円の価値が下がるように相対的で、すべての通貨が同時に下がることは原理的にありません。為替取引はコイン投げと同じゼロサムゲームで、あるひとが儲かれば、別のひとが同じだけ損をする仕組みになっています。でもみんな、「自分が儲かる側になるはずだ」と思っているから人気があるんですね。
為替市場の相対性を利用すれば、資産を合理的に保全できます。ドルが暴落しても、そのぶんだけ円の資産価値が上がるし、その逆もしかり。だとすれば、ドルと円を半々で保有することで、為替リスクを完全にヘッジできます。将来、人民元が上がってドルと円が同時に暴落するという事態でも起きないかぎり、これだけで金融資産の価値は安定し、「国家破産」を心配する必要がなくなります。
こつこつ貯めたお金で資産運用するふつうのひとにとって、ビットコインやFXで大きなリスクを取る合理的な理由はありません。「金(GOLD)はどうなのか」と聞かれることもありますが、資産形成のもっとも効率的な方法は「複利」を利用することです。利息のつかない貴金属を長期で保有するのはバカげていると、“投資の神様”ウォーレン・バフェットはいっています。
そうなると結局、「株式への長期投資はプラスサムのゲーム」というファイナンス理論の大前提に戻ることになります。株式市場にはよいときも悪いときもあり、不況や暴落なども起きますが、長期で見れば「もっとゆたかになりたい」「もっと幸福になりたい」というひとびとの欲望を駆動力に、グローバルな株式市場はずっと拡大してきました。“投資の神様”バフェットだけでなく、ラスベガスとウォール街を攻略した“最強のハッカー”であるエドワード・ソープも、「(自分が運用するファンドを除けば)個人投資家はインデックスファンドに投資するのがいちばん」と述べています。
株式インデックスファンドの積み立てが、他の投資戦略に比べて圧倒的に有利なのは、タイパがきわめて高いことです。いったん銘柄を決めてしまえば、あとは毎月、口座からの自動引き落としで積み立て投資するだけ。時間コストはゼロです。そのうえiDeCoやNISAのような税優遇のある制度まで用意されている。投資を趣味や専業にしているひとを除けば、大半のひとはこれだけで十分です。