十分な貯蓄のある高齢者でも給付対象に
実際のところ、「住民税非課税」となるかの線引きは、年代やどのように収入を得ているかによって違いがあり、結果として「高齢者のほうが住民税非課税になりやすい」という現実もある。東京都港区のホームページには、住民税非課税になる条件として〈前年の収入が以下より少ない人〉として下記のような説明がされている。
〈(1)アルバイトやパートの給与収入が100万円以下/(2)65歳以上で年金受給のみの人は、年金収入が155万円以下/(3)65歳未満で年金受給のみの人は、年金収入が105万円以下/(4)不動産収入等所得がある人は、収入から必要経費を引き、合計所得が45万円以下(令和2年度まで35万円以下)〉
つまり、アルバイトやパートでも働いている人なら年収が100万円を超えると住民税が課税されてしまうが、65歳以上の年金生活者であれば年金収入が155万円あっても住民税非課税になるのだ。また、住民税が非課税になるかどうかは、所得によって判断され、どれだけ資産があっても関係ない。だからこそ、住民税非課税世帯への給付に対して、前出の30代独身会社員のような層が「高齢者優遇ではないか」と不満を抱くわけだ。ベテラン社労士が解説する。
「高齢者の場合、年金収入はさほど多くなくても、十分な貯蓄のあるケースも少なくない。総務省の家計調査(2021年)によれば、世帯主が65歳以上の2人以上世帯の貯蓄額の平均値は2376万円。そうした層が支援対象になる一方で、正社員になれなかった氷河期世代、ワーキングプアとなっている若者などに、支援策が行き届いているのか、もっときちんと確認がなされるべきではないか」
岸田政権は今後、どのような支援策を打ち出していくのか。機動的な対応が求められている。(了)