足元で再び原油価格が上昇している。シリコンバレー銀行の破綻をきっかけにWTI原油先物価格は一時急落、3月17日には66.74ドル/バレル(終値、以下同)まで落ち込んでいた。その後、多方面から金融支援策が発表されると持ち直し、3月31日には75.67ドルまで戻していたが、4月に入りそこから急上昇している。
4月10日現在、80ドルを超えたあたりで推移しているが、これは、ほぼ26週移動平均線と一致、また、昨年11月以降、高値抵抗ラインとなる水準だ。ここを離れてさらに上昇するようなことになれば、世界は再びコストブッシュ型インフレに悩まされかねない。
せっかく落ち着き始めた金融市場だが、インフレを抑えきれなければFRB(連邦準備制度理事会)は利上げを止めることができない。そうなれば景気のハードランディング懸念が再燃し、それが新たな金融不安を引き起こしかねない。
OPEC+は4月2日、5月から原油生産量を各国が自主的に減産すると発表した。サウジアラビアが1日当たり50万バレル、ロシアが50万バレル(ただし、3月から減産)、イラクが21万1000バレルなど、全体で166万バレルの減産となるようだ。
2022年11月にはOPEC+全体で1日当たり200万バレルの減産を決めている。全世界の供給量の約2%に及ぶ量であっただけに当面、新たな減産はないだろうとみられていた。そのため、今回の減産は原油先物市場でネガティブサプライズとして受け止められた。
なぜOPEC+は減産に踏み切ったのか。
最大の要因は、足元の原油価格の急落であろう。ウクライナ情勢に大きな変化が見られない中で突然、シリコンバレー銀行など一部の米国の銀行が破綻、クレディ・スイスが経営危機に陥った。グローバルな金融危機発生のリスクが高まり、それがグローバル経済危機への懸念、原油需要の大幅な縮小懸念へとつながった。
産油国は当然、世界の原油需要をコントロールすることはできない。原油価格が急落すれば自らの利益を守るには迅速な減産によって供給を調整し、価格下落を防ぐほか方法はない。