原油価格の上昇に伴い、昨年から価格上昇が続くガソリン。追い討ちをかけるようにロシアによるウクライナ侵攻が勃発し、岸田文雄首相は3月3日、さらなるガソリン急騰に備えるため、補助金の上限を1リットル当たり最大25円に引き上げることを発表した。
だが、専門家の間からは「ロシアからの原油輸出が滞れば原油価格が4割上昇」し、日本のレギュラーガソリンの価格は「1リットル200円を超える」との指摘も出ている。そうなると経済への影響は大きい。
コロナ明けのドライブ旅行を計画している人には痛手で、都内のタクシー料金も早ければ10月に値上げされる。さらに、石油価格の上昇は魚介類の価格高騰にもつながるという。経済ジャーナリストの荻原博子さんの説明。
「ガソリンや灯油価格の上昇というと、ビニールハウス栽培のコストアップによる野菜や果物の値上げにつながるイメージがありますが、漁船の燃料費の上昇に、トラックなどの流通コスト増も加わって、鮮魚の値段はそれ以上に上がりますよ。4月には最低でも1割は値上がりすると考えてもらいたい」
ロシアのウクライナ侵攻の物価への影響は、もちろんガソリン価格だけに留まらない。ロシアから直接輸入している水産物の値上がりは、より顕著だ。ファイナンシャルプランナーの丸山晴美さんの話。
「日本はロシアからスケトウダラ、真だら、かに、鮭・マス類、ししゃもなどを輸入しています。今後はたらこや明太子なども値上がりする可能性も。夏には現行価格の1.2倍になる可能性があります。ロシア以外の遠くの国から輸入するにも輸送費がかさむので、いずれにしても価格は上がります」
水産関係ではすでに異変が起きている。その1つが、高級食材の代表格「うに」だ。水産アナリストで貿易会社「タンゴネロ」代表の小平桃郎さんが指摘する。
「2021年の貿易統計によるとうにの輸入量全体の約8割の8924トン(殻付)がロシアからです。これは国内漁獲高の8000トン弱をもしのぐ量です。これらの多くは生で入ってくる“活うに”で、ストックがないため物流や決済の停滞があれば国内の流通量にすぐに影響が出る。そうした事態を見越し、ロシア産活うにをウクライナ侵攻前の倍以上に値上げしている卸売業者もすでにいるようです。ウクライナ情勢が緊迫したままコロナ禍が明けて飲食店が通常営業になれば、活うに全体の相場が2~3倍程度となることも充分考えられます」
現在、ロシアがヨーロッパ各国の航空会社に対して、ロシア領空の飛行を禁止しているため、ノルウェー産サーモンが日本に空輸できないという意外な影響も起きている。寿司店や海鮮丼を出している店からは「うにやサーモンの入っているメニューが出せなくなるかもしれない」という悲鳴が聞こえる。
※女性セブン2022年3月24日号