家計

日銀・植田和男総裁体制で金利どうなる? 金融政策正常化で「住宅ローン破綻」の恐怖

住宅ローンの4分の3が変動金利型

 金利上昇に伴って、どうしても気になるのが住宅ローンだろう。長期金利は、住宅ローンの固定金利を決める指標であり、昨年12月の変動幅拡大によって、すでに多くの金融機関で住宅ローンの固定金利を引き上げる動きも出ている。

「いますぐ金利上昇するわけではないとしても、長期金利はこれまで低く抑えられてきた分、少しでも上がり出すと反動で想定以上に上がってしまう可能性はある。仮に、2%まで上昇すれば、現状の0.5%から見れば4倍もの金利上昇となり、負担は一気に増す」(須田氏、以下同)

 そして、固定金利もさることながら、多くの人が組む変動金利ローンの行く末も心配が尽きない。今年3月末に国土交通省がまとめた「民間住宅ローンの実態に関する調査」によれば、変動金利型の割合は住宅ローン全体の76.2%を占め、近年は右肩上がりで増え続けている。

「長引く超低金利下で運用難にあえぐ銀行は個人向けの住宅ローンに力を入れ、“金利が低いから”と変動金利型の住宅ローンを組む人が急増。返済資金に余裕がない人も多く、変動金利の基準となっている短期金利まで上昇してしまえば、“住宅ローン破綻”が増えるのは必至の情勢です」

 現状では、短期金利は日銀の金融緩和策によって「マイナス金利」となっている。それゆえ0.5%を切るような変動金利でローンを組んでいる人も少なくない。

“二極化”が進み中流から下流転落も

 植田新総裁は就任会見で「マイナス金利政策は現在の強力な金融緩和のベースになっている。現在の基調的なインフレ率がまだ2%に達していないという判断のもとでは、継続するのが適当であると考えています」と当面継続する姿勢を示している。

 だとすれば、マイナス金利政策をすぐに解除することは考えにくく、変動金利は引き続き低水準で推移するとも考えられる。

「とはいえ、いますぐではないとしても、景気回復に伴って金融政策の正常化が進めば、マイナス金利は解除される。気をつけたいのは、ここでいう景気回復とはあくまで大企業中心ということ。今春闘で賃上げ機運が高まっていますが、それはあくまで好調な大企業の話。

 この先、富める者はより富み、そうでない者はより貧しくなる“二極化”はますます進むでしょうから、ギリギリで住宅ローンを組んでいるような世帯は置いて行かれて、住む家を失う状況に見舞われるかもしれません。そうなれば、中流だと思っていた人たちが一気に下流に転落する恐れすら浮上してくるでしょう」

 日銀の金融政策の目的のひとつは「物価の安定を図り、国民経済の健全な発展に貢献する」こと。国民を置き去りにすることがないよう祈るばかりだ。(了)

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