取引先との商談や打ち合わせの場などにおいて、どのような雑談をすればよいのか、悩んだことがある人は少なくないだろう。適切な雑談は信頼関係を築くのに寄与するが、具体的にはどのような内容を選べばよいだろうか。新刊『世界の一流は「雑談」で何を話しているのか』が話題の、元Googleの人材開発責任者で経営コンサルタントのピョートル・フェリクス・グジバチ氏が、海外と日本の違いを示しながら、具体的に解説する。
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ビジネスの相手と交わす雑談には、「ビジネスを成立させる」ことだけでなく、「相手と信頼関係を結ぶ」という大きな目的がありますが、海外のビジネスマンは、日本のビジネスマンが簡単に「上下関係」を作ってしまうことを不思議に思っています。
大手企業と中小企業、発注企業と下請け企業、営業と顧客など、その規模や立場によって態度が変わることが奇妙な現象と映っているのです。日本では、発注元は仕事を与える立場として偉そうに振る舞い、受注元の営業マンは相手にペコペコすることが「普通」と考えられています。「お金を払うのだから、しっかりやれ」という上から目線の顧客に対して、「くそー、また残業だよ」と愚痴りながら、プライベートの時間を犠牲にして働く営業マンの姿は、海外ではありえない光景です。
こうした上下関係が続く限り、日本の「働き方改革」が実現する日はやって来ないのではないか……と思えるほどです。上下関係の弊害は、単に働き方の問題だけではなく、お互いの信頼関係が構築されない状態で仕事をすることになりますから、発注元の思惑に振り回されるだけで、仕事のクオリティが向上することは期待できません。顧客企業にとっても、営業マンにとっても、あまりいい関係ではないと思います。
取引先のことを「パートナー」と呼ぶ
僕がビジネスにしているコンサルタント事業では、外部の人の前では顧客のことを「お客さん」と呼んでいますが、内部では「パートナー」と称しています。社内のメンバーには、相手の担当者と信頼関係を築いて、しっかりとした「パートナーシップ」を構築することを強く求めています。
そのためには、雑談を通してお互いの人間性や考え方を共有しながら仕事を進めていくことが大切だと考えています。海外でも日本でも、継続して結果を出している営業マンは、予算を含むビジネスの意思決定者を見極めて、対等な人間関係を作っています。逆の見方をすれば、意思決定者と人間同士の対等な関係を構築できなければ、目覚ましい成果は得られないということです。