日々、さまざまな事件が起きているが、裁判を聴きに行くと、粛々と進められる裁判の中で、時折、裁判官の温情が見え隠れする時がある。実際の2つの裁判の例から、裁判官がふと漏らした、思わずホロリとさせられる言葉を紹介しよう。
【事件データ1】
・東京地裁 深野英一裁判官(2019年5月15日)……JR総武線内で女性のお尻を触った男に対して。罪名は迷惑防止条例違反(痴漢)。被告人は強盗強姦で前科1犯だった。
『ご両親に言いたいことはありますか? 後ろを向いて言ってください』
被告人は21才の時に強盗強姦の罪で懲役11年の実刑判決を受け、2017年に出所していた。この裁判を傍聴した裁判ウオッチャーで芸人の阿曽山大噴火が語る。
「出所後も両親と暮らしており、2年間、性犯罪プログラムを受けていた中で、理学療法士になりたいというので、専門学校を受けさせるなど、ご両親は今後の生活のためにバックアップしていたんです。それだけに、再犯の裁判の時のご両親の落胆ぶりは傍聴席で見ていた私にもわかりました」
被告人から話を聞いた後、深野裁判官は《ご両親に言いたいことはありますか?》と尋ねた。
「被告人が話を始めようとすると裁判官が《後ろ(両親の方)を向いて言ってください》と促し、被告は両親の方を向いて話し始め、『つらい思いをさせてごめんなさい』と号泣。それに対して、裁判官は《ハンカチあるなら涙を拭いて》と声をかけたんです」(阿曽山)
温かい声かけに、被告人が涙することもある。