この春、ビール大手4社が競うように新商品の投入や新CMの放送を始め、シェア争いが激化している。サントリーは鳥井信宏社長の号令のもと4月4日に発売された新商品「サントリー生ビール」で攻勢をかける。昨年、キリンから3年振りに業界1位の座を奪還し、追われる立場となったアサヒビールはコロナ禍の2021年に投入した「アサヒ生ビール(通称・マルエフ)」がヒットしている。
2022年のビール類シェアで3年ぶりにトップを奪還したアサヒは、今年3月に就任した松山一雄新社長が率先して様々な改革に取り組む。『経済界』編集局長の関慎夫氏が語る。
「鹿島建設やP&G、サトーHDなどを経て入社した松山氏はマーケティングのプロ。お化け商品であるスーパードライのリニューアルを主導し、蓋を開けると泡が吹き出す『生ジョッキ缶』やマルエフなど次々とヒットを生み出しました。リスクを取ってイノベーションを起こせる人物で、実際に会うと明るく陽気で魅力的です」
キリンは多分野への進出で躍進を目指す。
「もともと強かったマーケティング力をさらに強化し、主力の一番搾りに加えて第3のビール『本麒麟』や缶チューハイ『氷結』が好調です。高価格帯の国産クラフトビール『スプリングバレー』ブランドが伸びていることも追い風です」(同前)
上り調子の3社に対し、やや苦しいのがサッポロ。
「主力の黒ラベルは熱狂的なファンが多いものの続くヒット作に恵まれず、高価格帯で圧倒的なシェアを誇った『エビス』も低迷している。3社のように外部の人材を入れるなどの“冒険”が必要かもしれません」(同前)