「国民負担率」の数字が注目を集めている。国民所得のなかに占める税金や社会保険料(年金・医療・介護保険料など)の割合を示す指標だ。財務省によれば2022年度の国民負担率は47.5%(税負担28.6%、社会保障負担18.8%)の見込みだという。負担が国民所得の半分近くに及ぶという状況を受け、ネット上では江戸時代の年貢の「五公五民」になぞらえて不満を表明する声が相次いだ。
そうした世論の盛り上がりを受け、4月19日の参院本会議では日本維新の会の東徹氏が国民負担率について「五公五民」のようだと指摘。それに対して岸田文雄首相は、税金や社会保険料が社会保障給付や公的サービスで国民に還元されていることから「江戸時代の年貢と同列に論じるのは不適当だ」と反論した。
たしかに、税金や社会保険料は年貢と完全に同じものと扱うことはできないだろう。しかし、少なくない人が不満を感じているのは、保険料の負担が年々増しているのに対して、給付が充実してきたとは言い難い現状があるからではないか。ベテラン社会保険労務士が言う。
「たとえば、会社員が給料から天引きされる社会保険料はどんどん負担が増えてきました。2004年に13.93%だった厚生年金の保険料率(労使合計)は、年金改正により毎年0.354%ずつ引き上げられ、2017年には現在の18.3%に到達しました。少子高齢化のために負担と給付のバランスを取るためとはいえ、保険料負担が3割以上も増えた計算になります。
その一方で年金の給付は削られています。本来は物価や賃金とともに上昇する仕組みだった年金額は、『マクロ経済スライド』という仕組みが2004年の年金改正で導入され、物価や賃金の上昇に比べて年金額の増加が抑制されるようになった。つまり、インフレ下で年金が“実質減額”する仕組みが導入されているのです」
現在、日本はインフレの大波に襲われているが、年金は実質的な減額がなされている。2023年度の公的年金額は物価上昇よりも0.3~0.6%低い伸び率に抑えられた。保険料負担は大きく増えたが、給付は削られているのである。