この計算を、auじぶん銀行と住信SBIネット銀行の金利でおこなったのが下の図です。なお、金利は執筆時のものであり、各銀行の団信の価値は住宅ローン比較サービス「モゲチェック」の分析結果を使用しています。
auじぶん銀行の実質的な金利コストは、「マイナス0.031%」 、住信SBIネット銀行の実質的な金利コストは「マイナス0.01%」 となりました。
このように実質的な金利コストが両社ともに、マイナス金利になっているのです。こうした状況では、借り手は銀行に金利を支払っているのではなく、逆に受け取っていると考えることもできます。今までの住宅ローンは、金利がどれだけ低くても「プラス金利」での競争でしたが、今回の出来事はまさに一線を超えてしまった状態です。
実質マイナス金利商品が登場した3つの理由
なぜ実質マイナス金利の商品が登場したのでしょうか? 理由は3つあります。
1つ目が銀行の数が多いことです。低金利を武器に住宅ローンをネットで集客強化する銀行は10年前に比べて倍増しています。現在はメガバンク、ネット系銀行、主要地方銀行などを合わせると20行以上あります。需要に比べて提供側が多くなると、どうしても値崩れしやすいのです。
2つ目はそもそも住宅ローンが差別化しにくい商材だという点です。お金に色はありませんので、「A銀行は金利が高いけれども、金利の低いB銀行よりは良い」となりづらい。別の言い方をすれば、住宅ローンは水や電気のようにコモディティ化しているとも言えます。この点も金利競争を促しやすいと言えるでしょう。
3つ目はユーザーがスマホで住宅ローンを選ぶようになったことです。10年前であれば住宅ローンは不動産会社の営業マンが紹介することが多く、「住宅ローンの比較」があまり一般的ではありませんでした。それがスマホの登場によってネット比較が当たり前になり、他行の金利がガラス張りで横比較されるようになったため、低金利の住宅ローンに人気が集中するようになったのです。
なお、「モゲチェック」のユーザーを分析すると、金利ランキング上位3行で申し込みシェアの50%近くを占めます。ランキング上位を取らない限り、顧客をつかむことができないのです。こういった市場の構造ゆえに、銀行も簡単には金利引き下げ合戦を止められないわけです。