それでも「会社都合」を目指すほうがいい
ネット上でも自己都合で退職した人への支給迅速化の動きを歓迎する声は多い。ただし、今回の制度改正が実現したとしても残る問題はある。“本来は会社都合による退職だと認められて然るべきと考えられる人が、自己都合の退職として扱われるケースが存在する”という問題だ。会社側としては、会社都合の退職者がいると一定期間、国の助成金などが受け取れないといった仕組みがあるために、自己都合の退職として扱いたいと考えがちだという。
前出・蒲島氏もこう指摘する。
「パワハラやセクハラといった、ハラスメントが原因で会社を辞めても、なかなか会社都合の退職と認定してもらえない問題はたしかにあります。会社で嫌がらせを受けて自分から辞めた場合、まずは自己都合の退職になる。その後に労働局などに相談し、ハラスメントを認定してもらうことで、会社都合で退職した『特定受給資格者』に変更してもらえるといったケースは存在します。
自己都合で退職した場合の一般受給資格者と比べて、会社都合の特定受給資格者となったほうが、失業給付の支給日数が長くなる。今回、検討されている改正案が実現し、自己都合でも会社都合と同じように迅速に失業給付を受け取れるようになったとしても、支給日数の違いは残るでしょう。仮に嫌がらせを受けて辞めたのに自己都合扱いとされている人がいたら、ハラスメントを認定してもらって会社都合の特定受給資格者を目指したほうがよいという状況はそのままなのだと思います」
会社勤めの人にとって雇用保険は重要な社会保険制度だ。制度がどのように変わろうとしているのか、どういった問題が残るのかを知っておくのは大切なことだろう。(了)