成人した子供が働いていないと、親の立場としては不安になる。「子供に自立してほしい」と願う親は多い。その一方で子供の立場からすると、「老親に自立してほしい」と願い、高齢になっても働く親に感謝の気持ちを抱いている──。ネットニュース編集者の中川淳一郎氏は、77歳の父親が今でもバリバリと仕事をしていて、それをとてもありがたいと感じているという。中川氏がその思いをつづる。
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もう父親とは7年ほど会っていませんが、これは幸せなことだと思います。というのも、達者でいてくれるからです。子供がいる場合は帰省をすることもあるでしょうが、私には子供はいない。となると、わざわざ実家に戻ろうとは思わないわけです。将来もし、実家へ行くことがあるとすれば、親の健康状態が悪化した時の見舞いやら、その後の介護等を含めた家族会議のため、となるでしょう。内臓疾患やがんや認知症が高齢者にはつきものですが、幸いなことに両親とも至って健康です。
母親は元々病院にまったく行かないようなタイプで、飄々と一人で生きるのが好きな人物。人付き合いがほとんどなくても気にしません。一方の父親は60歳の定年まで会社員勤めをし、その後は別の会社で働き、67歳頃になって一旦無職に。すると、地元の囲碁サークルに入ったり、麻雀を旧知の人々とやるようになりました。とにかく暇をもてあましていたのと、人付き合いが恋しかったのでしょう。
しかしそんな生活も長続きはせず、やはり仕事がしたいということで、突然、中小企業診断士の資格を取ります。その後は某国際機関の外注先となり、東南アジアなどで工場立ち上げのコンサルをするようになりました。いまや年に半分は海外生活という状態なのですが、息子としては本当に良かったと思うことばかりです。
というのも、母親は非常に楽観主義者なのですが、父親は対象的に繊細なタイプ。そんな人物が67歳以後、麻雀と囲碁しか生きがいがなくなったらヤバいでしょう。母親も「あの人は外に出なくなると、ボケるんじゃないか」と常々心配していました。と同時に、毎日、新聞読んでテレビばかり見て、「メシは?」しか言わない生活が続くと、母のストレスも溜まる一方なのではないか、と思っていたのです。