出生、結婚、死亡など、人生の節目において、登場するのが「戸籍」だ。そもそも戸籍とは何なのか? 意外と知らない戸籍の役割について、元市役所職員の山下敦子さんに聞いた。
先祖をたどれる戸籍は日本だけの制度
戸籍とは、日本国民が出生してから死亡するまでの身分関係(出生、婚姻、死亡、親族関係など)を登録し、公に証明するための公簿で、本籍地の市区町村役場に保管されている。似たような制度は他国にはない。
「戸籍があることによって日本国民であることが証明されます。一個人の身分関係(婚姻、離婚、縁組、離縁など)に加えて、親族的身分関係(夫婦、親子、兄弟姉妹など)を公証する役割もあります」(元市役所職員の山下敦子さん・以下同)
カナダやアメリカでは、個人の出生・結婚・死亡などの情報は、各州で管理しており、イギリスやフランス、東欧諸国では、個人の結婚や離婚などの情報は国で記録されるものの、家族単位での管理はしていない。
「日本の場合、戸籍をたどれば、先祖の名前やその家族構成までわかります。戸籍はある意味、“家族の絆”を示しているといえます」
住民票と異なり、どこに置いてもいい
住んでいる場所を証明する“住民票”と違い、本籍地は日本に存在する地名、地番であれば、どこに設定してもいい。
「住んでいる場所を変えなくても、本籍地だけ変更できます。これを転籍といいます。居住していなくても登録できるので、希望すれば皇居(〒100-0001 東京都千代田区千代田1番)の住所にも設定できます。お気に入りの名所旧跡を本籍地に設定している人もいますよ」
外国人と日本人が結婚するとどうなる?
一般的に、結婚することを“入籍”というが、厳密には意味が違う。入籍には、婚姻のほか、養子縁組をして養親の戸籍に入ることなど、多くの意味がある。
「戸籍が作れるのは日本国民だけ。日本国籍を持たない外国人に戸籍はありませんから“入籍”はできません。外国人と日本人が結婚すると、日本人が筆頭者となる戸籍ができ、日本人配偶者の戸籍の“身分事項欄”に名前や国籍が記載されるのです」