「暴対法」そして「暴排条例」により、ヤクザに対する警察の締め付けは、年々厳しくなっている。そうしたなか、ヤクザの世界では、極貧生活から抜け出せない構成員も増えているようだ。また、若手人材は半グレに流出している現状もある。あらゆる仕事・業界の“マネー格差”について徹底調査した話題の新刊『マネー格差の天国と地獄』(ニューノーマル研究会・編)から、現代のヤクザの置かれた厳しい現実をレポートする。
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ヤクザがヤクザとしての仕事をしにくくする「暴力団対策法」、通称「暴対法」が施行されたのは1992年のこと。ヤクザが一般庶民の争い事に介入して金を巻き上げる、いわゆる民事介入暴力は、それまで対処が難しかった。
しかし、暴対法によって「みかじめ料を要求する行為」「口止め料を要求する行為」といった27の行為について明確に禁止することで、警察などによる民事介入暴力への取り締まりがしやすくなった。ここからヤクザの世界は冬の時代が始まったと言われている。
そして2004年から各地方自治体が競うようにヤクザの影響力を弱めるための条例を施行するようになった。いわゆる「暴排条例」だ。そこからヤクザの生活はさらに締め付けられるようになる。
かつては多数の死傷者が出るような大規模な抗争が頻発していたが、暴対法や暴排条例の施行以降はそのような抗争は激減した。近年ヤクザが出世するための評価基準はもっぱら「カネ」で、より多くの上納金を納めた者が出世するという。
下から上にカネが流れるピラミッド構造
暴力団では組員すべてが個人事業主扱いのようなもので、「シノギ」(仕事・収入)のために組の看板を使わせてもらう見返りとして、下部団体から上部団体に上納金を納めるという理屈で、ネズミ講のように、下から上へとカネが流れるピラミッド構造となっている。
そして、そのピラミッドの最頂点にいる「本家」の組長の年収は、数億~数十億円にものぼり、その内訳は数十、数百もの配下団体からの上納金がほとんどだと言われている。