徳島県警を退職後は犯罪コメンテーターとして活躍する「リーゼント刑事」こと秋山博康氏の連載「刑事バカ一代」。秋山氏が現役時代に体験したヤクザとの仰天エピソードを綴る。
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おはようさん、リーゼント刑事こと秋山博康です。
徳島県警を定年退職後、犯罪コメンテーターとして活動するワシやが、今年8月、北九州の暴力団「工藤会」の野村悟被告に死刑判決が出たのは驚いた。暴力団追放運動にかかわる一般市民の店に手榴弾を投げ込むほど凶暴な組織のトップが極刑になるのは画期的で、辛抱強く捜査を重ねた福岡県警には頭が下がる思いや。
ワシも刑事時代、ヤクザとは何度も大立ち回りを演じたなぁ。
刑事7年目に配属された警察署は管内に大きな暴力団が2つあり、派手な入れ墨をしたヤクザが数名、官舎の近くにあった銭湯にわが物顔で出入りしとった。
しかも連中は調子に乗って、「○○組××」と自分の組と名前を黒マジックで書いた“マイ洗面器”を脱衣所のロッカーの上にずらりと並べとった。それを見たワシは頭に来て、ヤクザの洗面器を全部ゴミ箱に放り捨て、代わりに「○○警察署刑事課・秋山」と書いた洗面器を置いたんや。
するとヤクザがパタリと銭湯に来なくなった。のちにマル暴の担当者に聞いた話では、当時の人気刑事ドラマになぞらえ、「何をするかわからん“あぶない刑事”が異動してきた」と組員の間で評判になっていたそうや(笑)。
知人を脅した容疑で暴力団組長の自宅をガサ入れした時は衝撃的だった。2階の書斎にある冷凍庫の中を確かめると、何と10本ほどの小指が並んどった。慌てて「何やねん、コレは!」と聞くと、親分はニヤリと笑って「かわいい子分の指を粗末に扱うわけにはイカンでしょ」と答えよった。さすがのワシも小指のコレクションを見たのは初めてで驚いたで。
昔のヤクザは不祥事やルール違反を起こすと、親分や兄貴分への「ケジメ」として“エンコ詰め(指詰め)”をすることがあった。
痛みを抑えるため、氷で冷やした小指の根元に糸を巻いて麻痺させ、裁断機で一気に切ることが多かった。中には、引き戸に出刃包丁を固定し戸を力任せに引いて、小指をスパーンと切り落とす猛者もおった。