「特に『農地』は要注意です。農地として使われていた土地は、建物もないし、残留物も土壌汚染もなく、一見、問題はなさそうです。しかし、水利施設などの維持管理費などの賦課金を土地改良区に払っている場合、『通常の管理に過分な費用がかかる土地』に該当してしまうのです」
一方で、「境界線がよくわからないからダメだろう」と思いがちな「山」については、可能性がないわけではない、と荒井弁護士は言う。
「境界の判断は、高度な測量機器を使って行うわけではありません。隣接する土地の所有者に書類を送付し、申請者が用意した境界の写真で間違いがないか確認するだけ。お隣さんからの異議申し立てがなければ、境界の争いなし、という判断になります。最初から『どこからどこまでがうちの山かわからないからダメだろう』と申請を諦める必要はないと思います」
審査に半年から1年かかる見通し
手続き方法を説明する。まず所在する土地の法務局に事前に相談をして、申請書を作成・提出。このとき、審査手数料1万4000円を納付する。この手数料は審査が却下されても戻ってはこないので、注意が必要だ。
そして審査が完了し、認められたら国への名義変更が許可される。承認の通知が届いたら、10年分の土地管理費相当額を納付し完了だ。ちなみに負担金は、基本一筆20万円となっているが、宅地や農地、森林の場合は面積によって算出されるという。
「手続き上で留意しておくことは、まず、審査に半年から1年程度かかるということです。今後、もう少し早くなる可能性はありますが、国は、この程度の期間はみてほしいとしています。ですので、1年待った結果、承認されなかったという可能性もあるわけで、一刻も早く手放したい、と思っている人にはじれったく感じるかもしれません」
もうひとつ、実務的に悩ましいのが、現地調査の必要性だ。申請には、土地の位置や範囲を明らかにする図面のほか、隣接する土地との境界線がわかる写真などを提出する必要があり、一度は必ず現地を訪れないといけない。
「相続はしたものの、すでに地元を離れて十数年が経っていて、どこの土地なのかもわからないというケースもあるでしょう。宅地であればまだしも、山林ともなれば大変です。終活の一環として不動産の処分を考える方は増えていますが、高齢者にとって、この現地調査はかなりの負担となるのではないでしょうか」