では、肝心の審査が通る可能性はというと……「国が行った事前調査を踏まえると、承認がおりるのは数%程度になるかもしれない」とのことだ。これには肩を落とす人も多いかもしれない。
「これまで土地の相続を拒否するには、一切の相続を放棄するしかありませんでした。ほぼ手立てがなかったところに、今回の制度で手段が一つ増えたわけです。国庫に帰属した土地は税金で管理されるわけですから、ある程度、審査が厳しいのは仕方がない、と考えられます」
不要な土地を管理し続ける負担は、経済的にも精神的にも小さくない。さらに、それを子どもや孫の代に引き継がせるのも大きな負担だ。決して確率は高いとは言えないが、国庫帰属制度は“負動産”に悩む人にとって、光明のひとつであることは間違いない。条件に該当する人は、「相続土地国庫帰属制度」への申請もひとつの選択肢として頭に置いておきたい。
【プロフィール】
荒井達也(あらい・たつや)/1988年福井県生まれ。群馬弁護士会所属。負動産問題に注力し、所有者不明土地や空き家、管理不全不動産等に関する案件を多数対応。相続人・共有者が100名以上存在する案件を解決した実績も。サイト『負動産の窓口』を運営するなど、積極的に情報発信を行う。著書に『Q&A令和3年民法・不動産登記法改正と実務への影響』(日本加除出版、7刷)がある。