ところがいま、ヒョンデ・グループと言えばトヨタ自動車グループとフォルクスワーゲン・グループ(以下、VW)に次ぐ、第3位に位置しています。米国の「ビッグ3」のリーダー、ゼネラル・モーターズや 日産自動車、そしてステランティスを追い抜いての結果です(2022年末時点)。この躍進のひとつの要因となったのはハード面での進化だけではなく、デザインの優位性にあります。2000年代に入ってからデザイン面で日本車の影響下から完全に脱して、魅力的で個性的なデザインのクルマがグッと増えたからです。
こうしたデザインへのこだわりは、少し時代は戻りますが、1975年に発売された韓国初の国産車「ポニー」の頃からあったように思います。コンパクトハッチのポニーはエンジンやプラットフォームこそ、初代三菱ランサーのものを流用していましたが、デザイナーには、ジウジアーロを起用し、価格の安さだけではないという姿勢を見せました。そんなポニーは韓国国内だけでなく、後にカナダでもベストセラーになったこともあります。
そんな状況の中で、韓国での取材やわずかに上陸してきていた韓国車を目にしたり、試乗するたび、結構カッコ良くなってきたなぁ、と思っていました。
デザインも重要な性能のひとつと再認識
そして12年前、ヒョンデの上級サルーンとして日本でも販売されていた「グレンジャー」に乗りました。失礼を承知で言えば、「乗り心地も悪くないし、スタイルも……。でもあえて輸入車として買う理由が見つからない」という感想だったのです。
ところが今回、ステアリングを握ったBEVのアイオニック5と実際に対面すると、写真で確認するよりも魅力的なデザインをまとっていて、先進性があり、エモーショナルであり、魅力的だったのです。メカニカルな部分での自信をつけたヒョンデがデザインも武器に日本へ再上陸してくるのですから、それなりの勝算があってのことだと思います。最初の印象で、その理由の一端が見えたように思いました。
実際に走り出してみるとパワフルにしてスムーズ。BEVならではの重心に低さもあってスポーティでシャープな走りを実現してくれました。そのBEV独特の走りにおいては日本車も含め、多くのライバルを大きく超えるものではありませんが、不足やストレスを感じることもありませんでした。クロスオーバーSUVとしての走りでは「悪くないなぁ」というところでしょうか。