1989年にトヨタ自動車の高級車ブランドとして北米で展開が始まったレクサス。2005年には日本でもスタートしたものの、当初は苦戦。だがじっくりと粘り強いブランド展開と徹底したサービス体制により、現在では世界中でプレミアムブランドとして定着し、確固たるポジションを築き上げた。「その中心的なモデルとしてブランドを支え続けてきたのがプレミアムSUVのRX」と言うのは、自動車ライターの佐藤篤司氏だ。シリーズ「快適クルマ生活 乗ってみた、使ってみた」、今回は5代目モデルとなった新型「レクサス RX」に、佐藤氏が試乗してレポートする。
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電動化モデルを充実させた
トヨタ流の丁寧な品質管理によるクルマ作りに、プレミアムにふさわしい上質で贅沢な装備品や先進テクノロジー、そして極上の快適さをプラスしたレクサス。今でこそプレミアムブランドとして定着していますが、ブランドスタートの頃は苦労しました。ただ単に豪華装備を与えて高額にすればよいのではなく、高級車として積み重ねてきた経験や時間がブランド構築のために必要だったからです。プレミアムとして認知されるには熟成という価値も必要でした。
それから30数年、トヨタはセダンやスポーツカー、そしてSUVまで揃えたモデルラインナップを維持しながら、じっくりとレクサスというブランドの構築を世界中で行ってきました。その中心的なポジションにあるのがクロスオーバーSUVと呼ばれるタイプに属する「RX」です。SUVの本場、アメリカでの人気もあり、現在まで約95の国と地域で累計約362万台を販売してきたレクサスの主力モデルです。
当然、今回の5代目モデルの責任は重大で、多彩なユーザーニーズに応えると同時に、カーボンニュートラルへの貢献といった時代性も意識した3タイプのパワートレーンを準備しました。スポーティさを最優先とした2.4LターボHEV(ハイブリッド)の「RX500h」、つぎに2.5LのPHEV(プラグインハイブリッド)の「RX450h+」、そしてベーシックな2.4Lのガソリンターボエンジンの「RX 350」です。全モデルとも4WDで、RX350にだけ、廉価モデル(といっても664万円ですが)として前輪駆動(FF)モデルがあります。
その中で注目したいのが、870万円で200Vの普通充電も可能なPHEVの「RX450h+」です。最上級のスポーツモデル、900万円のハイブリッド(HEV)の「RX500h」も確かに魅力的ですが、少々尖った印象を受けます。日常使いやたまに出掛けるアウトドアなどへの対応力の広さ、そして何より総電力量18.1kWhという、PHEVとしては大容量で高出力のリチウムイオンバッテリを搭載し、「EVモード」を選択するとクラストップレベルのEV走行可能距離86kmでの航続可能なのが魅力です。
ちなみに軽自動車EVとして日本カー・オブ・ザ・イヤーを受賞した日産サクラのバッテリーの総電力量が20kWhですから、PHEVとして「RX450h+」は、かなり大きな容量のバッテリーを搭載していることになります。