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「ChatGPTの衝撃」にどう立ち向かうか 猛反発された「大学入試改革」構想者が今思うこと

大学入学共通テストへの英語民間試験、記述式問題の導入は見送られた(時事通信フォト)

大学入学共通テストへの英語民間試験、記述式問題の導入は見送られた(時事通信フォト)

AI翻訳時代に求められる「英会話力」

──AI時代に合わせた教育を実現するため、2020年の大学入試改革で、大学入試センターの共通テストに、英語の民間試験と記述式問題を導入しようとした。

鈴木氏:共通テストへは導入できなかったのですが、ほとんどの国公立大学が二次試験に記述式問題を設定するようになり、私大も慶應大だけでなく、早稲田大などいくつかの大学が導入しました。また、多くの大学で、英語の入試をCEFRやTOEICなどの民間試験で代用できるようになっていて、共通テスト以外では改革が進んでいます。

 ではなぜ、英語の民間試験と記述式が必要なのか。たとえば、DeepL翻訳は、文字化された英語の文章の和訳がほぼ実用レベルに達し、すでに多くの人が仕事や勉強で使っています。日本語で論理的な文章が書けるなら、英訳もほぼ問題ありません。膨大な量の英単語を覚え、構文や文法を必死に勉強しなくても、読み書きには困らなくなったのです。

 そうなると、重要になるのは英語でのコミュニケーション能力です。価値観の異なる多様な人々とコミュニケーションして、ディスカッションして、コラボレーションして、信頼関係を構築して、新たな価値を共創することはAIにはできません。それをするためには英会話の能力が必須になるので、英語学習を変えるため共通テストでスピーキングの試験を導入しようとしました。しかし、1からつくると莫大な費用がかかるので、民間試験で代用しようと考えたのです。

 会話を翻訳する自動翻訳機も進化していくと思いますが、その人の声や話し方の特徴とかが信頼関係を作るのには大事で、たとえば、ジョークに対し同じタイミングで笑うとか、こうした機微が共感や信頼を生むもので、いちいち自動翻訳を挟んでいたら、熱のこもったコミュニケーションはできません。

 もちろん、英語で会話するためには、基礎的な英語力は必要で、英文読解や英作文を勉強しなくていいわけではありませんが、従来のような、重箱の隅をつついて間違い探しをするような過剰な受験勉強は不要になります。

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