“答える力”よりも問う力”が求められる記述式問題の要点は「自問自答」すること
──英文読解や英作文で1点を争うような試験をする必要はなくなり、それより英語でのコミュニケーション力を磨くべきだと。一方の記述式問題を導入することはなぜ重要なのでしょう。
鈴木氏:記述式の設問というのは論述を求めていて、論述というのは、自ら問い、自ら答えるという“自問自答”をすることです。従来の仕事の多くは、誰かが問うた問題に対し、覚えた知識を使って、その問いに答えることでした。
AIは、人類が過去において文字や数字、あるいは画像、映像で表現し、蓄積してきた膨大な情報を処理して、回答を生成するので、人間よりもうまく問いに答えられます。一人の人間がどれほど知識を蓄えても、AIには勝てません。これまでの知識偏重型の教育は、“問いに答えること”を中心に教えてきたわけですが、その意味が薄れてきたと言えます。
しかし、AIは問いに答えることはできても、自ら問うことはありません。ChatGPTも質問を投げない限り、何もしません。だから、人間には“答える力”よりも“問う力”が求められるようになるのです。
(後編へ続く)
【プロフィール】
鈴木寛(すずき・かん)/1964年生まれ。東京大学法学部卒業後、通商産業省に入省。1995年夏から、通産省勤務の傍ら、大学生などを集めた私塾「すずかんゼミ」を主宰。大学教員に転身し、2014年より、東京大学公共政策大学院教授、慶應義塾大学政策メディア研究科兼総合政策学部教授(2023年から特任教授)に就任。2015年2月より2018年10月まで、文部科学大臣補佐官を4期務め、アクティブ・ラーニングの導入や学習指導要領の改訂、大学入学制度改革に尽力した。
取材・文/清水典之(フリーライター)