資本効率というのは、株主から集めた資金で、どれくらい効率的に利益を稼いでいるかをあらわすもので、ROE(自己資本利益率)で表されます。最近、東証がPBR(株価純資産倍率)1倍割れの企業に対して改善要請を出したことが話題ですが、このROEに関しても、再三にわたって改善要請が出ていますので、注目度の高い指標のひとつです。
ROEは「当期純利益÷自己資本(株主資本)」で計算されます。自社株買いは、自己資本を使って行われますので、自己資本が減少します。そのため、必然的にROEの数字が上昇し、資本効率が向上します。
以前の記事でも紹介したとおり、東証が企業価値の向上に関して、口酸っぱく提言していますので、ROEを上げるために重い腰を上げた企業が多かったと考えられます。
自社株買いにはデメリットも
上記のとおり、自社株買いは、既存の株主にとってメリットがあります。資本効率が向上することは、企業にとってもメリットでしょう。
一方、デメリットですが、企業サイドでは、資金繰りが悪化するリスクがあります。自社株買いは手元のキャッシュを使って行われるため、財務が脆弱な企業にとっては危険な手段です。また投資家サイドから見ても、財務が悪化することは、株価下落要因にもなりますので、喜んではいられません。
自社株買いは短期的には、ポジティブ要因として株価上昇につながりますが、その後、企業になんら変化がない場合は、その効果はいずれ消滅し、株価も下落するでしょう。自社株買いのニュースだけで飛びつくのではなく、財務に問題はないか、今後の成長が描けるか、持続的な企業価値向上につながるかどうかなど、きちんと事業内容を確認しましょう。
発表通り実施しない場合もある?
自社株買いの発表は注目されますが、実際に宣言通り実施されたかどうかの確認は、けっこうぞんざいです。発表したからといって実施が義務付けられているわけではありません。
ソニーグループ(6758)は、5月18日に、発行済み株式数の2.03%に当たる2500万株、2000億円を上限とする自社株買いを発表し、株価も急騰しました。同社は3年連続で2000億円上限の自社株買いを発表していますが、2023年3月期の取得は約1000億円分です。となると、今期も上限までは実施されない可能性があることも念頭に置きたいところです。
自社株買いが宣言通りに行われたかどうかは、たいてい投資家向けのIRページで「自己株式の取得状況に関するお知らせ」というタイトルで開示されています。どれくらいのペースで、何株取得しているかを確認できますので、自社株買いを材料に投資する場合は、かならず確認しましょう。