たびたび有名人や企業の脱税が話題になり、スポットが当たる国税調査官。税務調査の対象はどのようにして決まるのだろうか。新刊『税務署はやっぱり見ている。』が話題の、元国税調査官の税理士・飯田真弓氏が、過去の経験をもとに解説する。
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国税当局では実際に調査に着手するまでの手順というものがあります。それは「準備調査」と言われているのですが、次のような三つのステップを踏みます。
ステップ【1】机上調査
現在、国税庁はKSKというシステムを導入しています。国税総合管理(KOKUZEI SOUGOU KANRI)システムの頭文字を取ったものです。英語ではありません。NHKが日本放送協会の略なのと似ています。
国税庁は、近年の経済取引の複雑化・広域化など、税務行政を取り巻く環境の変化に対応しつつ、税務行政そのものの高度化・効率化を図り、適正・公平な課税の実現を目指すため、地域や税目を超えて情報を一元的に管理するコンピュータシステムであるKSKのシステムを導入しています。全国524のすべての税務署が一元的なコンピュータのネットワークで結ばれているのです。
KSKには、毎年提出される申告書のデータはもちろんのこと、調査官が実際に見聞きした情報もデータ化され蓄積されています。たとえば、調査官がマイカーで初詣に行った際、駐車場がなくて困っていたとします。すると、この調査官を親切に誘導してくれる男性がいました。彼に導かれ、到着したのは民家の庭先。あたりを見渡すと、すでに数台の車が停めてあり、そこまで誘導してくれた男性とは別の人物が、「1000円頂戴します」というので素直にお金を渡します。すると男性は受け取った千円札をおもむろにポケットに入れ、「ありがとうございます。気をつけてお参りを!」と言いながら次の車の参拝客に駆け寄っていきました。