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元国税調査官が明かす「調査対象を決める3つのステップ」 宅配便の利用頻度から無申告が発覚することも

 さて、このお話は何を物語っているのでしょうか。初詣は毎年恒例の行事。その民家に住んでいる人は、毎年、この時期に路上駐車する参拝客が多くて、うんざりしていたのかもしれません。そこで、こんなふうに考えました。

 自分の家の庭は結構広いし、お正月は息子も実家に帰ってくるから、手伝ってもらえば、車の一時預かりができる。参拝に来る人は、少しのお金を惜しんで路上駐車をして駐禁ステッカーを貼られるなんて、年始早々縁起が悪いと思うから、少し高めの値段設定でも駐車料を払うだろう。領収書を渡すのは面倒だからやめておこう…。

 こんなロジックで、参拝客の自動車の一時預かりは、この民家の毎年恒例の臨時収入源になっているかもしれないのです。そこで、この場合、調査官は記録を残すことになります。

【収集者】○○税務署 ○○部門○○
【日時】○月○日○曜日、○時○時
【場所】○○県○○市○○町
【氏名】○○
【内容】○○神社近くで臨時に青空駐車をさせている。1時間1000円。従事者60代男性1名と30代男性1名。売上金はポケットにしまい込んだ。領収書の発行は無。

 調査官はそのとき知りえた事実をメモし、税務署に出勤したら、その内容をKSKに入力します。KSKにはこのようにさまざまなデータが蓄積されています。それを一つひとつ丹念にチェックしていくのが机上調査です。

ステップ【2】外観調査

 外観調査とは、その会社の様子を外から見て、不正を働いているかどうかの判断材料にしようというものです。

 経営者の自宅や事業所などについては、税務署に提出されている申告書からわかります。外観調査では、調査官は経営者が毎日歩いているであろう自宅から事業所までの同じルートを辿ることで、道中にある金融機関を把握することができます。また、事業所の外観調査を行った際、前回の調査では取引先としてあがっていなかった会社の軽トラックが停まっている場合があります。調査官はその軽トラに書いてある会社名とナンバーをメモし、署に戻って検索をします。簿外取引の相手である可能性が高いと判断した場合、それが決め手となって調査着手となることもあります。

 インターネット取引が始まり、世の中に広がってきた頃、取引金額ではなく宅配便の受け払いの多いものについてピックアップしたことがありました。ある会社員の場合、ネットを使って物販などをしていました。サイドビジネス、つまり副業のつもりがどんどん売上が増えて、表に出すタイミングを失い、そのまま無申告を続けていました。会社員の家庭であるにもかかわらず、宅配便の利用頻度が高く調査の選定にあがったのです。売上金額は一目瞭然。預金通帳の入金を合計すればわかります。商品は蚤の市などで現金で仕入れていました。今でもそうだと思うのですが、蚤の市などで領収書を発行することはあまりないでしょう。必要経費の計算ができないと、そのままストレートに売上を所得とするのも酷なで、可処分所得から所得金額を算定することになります。

 年間の食費、自宅のローン、教育費、保険料、自分の小遣い、積立などから調査金額を計算していくこともあるのです。趣味の延長の小遣い稼ぎという軽い気持ちで始めた副業。1年、2年、申告をしなくても何のお咎めもないのをいいことに無申告を続けていると、儲けたお金を使い果たした頃にやって来るのが税務署です。税務署がやって来て、無申告が発覚すると、3年分、5年分、悪質であれば7年前までさかのぼって追加の税金を払わなければならないという事態にもなりかねないのです。

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