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元国税調査官が明かす「調査対象を決める3つのステップ」 宅配便の利用頻度から無申告が発覚することも

ステップ【3】内偵調査

 会社を外から見るだけでなく、実際に客として店に入ったりして、その実態を把握するために調査することを「内偵調査」と言います。

 現金商売や多店舗展開をしている会社の場合、内偵調査を行うことが多いのですが、黒っぽいスーツを着た、見慣れない一見客は経営者の印象にも残っていることがあるようです。内偵調査に行ったお店へ、税務調査で実際にうかがったところ、「この前、お客さんとしていらしてましたよね」こう言われることは珍しくはありません。

 調査のタマ(※調査対象)が選定されるのは、資料との突き合わせによってだけではありません。過去からの決算書を並べてみて、その流れから不正を想定することもあります。KSKでは、提出された申告書のデータからさまざまな分析を行い、いろんな数値を出しています。その数値が、「標準値」から大きくかけ離れたものになっていると、調査対象にあげられやすくなるのです。

 たとえば、売上が順調に伸びているところがあれば、なぜ売上を伸ばしているのかを聞きに行きたくなりますし、新たに資産を購入したという場合は、なぜその資産を購入したのか、その購入資金の出どころはどこなのかを聞きに行きたくなります。

 つまり、税務署がさまざまな数字を見て、少しでも「なんでだろう」と疑問を感じた場合、「どんな内容なのか聞きに行きたくなる=調査対象にあがりやすい」となると考えていただいていいかもしれません。

 調査官時代、名医と呼ばれる方のところに税務調査に行ったことがありました。全国から患者さんが来られるその名医の方に、「どうやって病気を見つけられるのですか?」とお尋ねしたところ、返ってきた言葉が、「お宅らも同じでしょ。長年やってたらわかるようになるんですわ」というものでした。まさしくこれが、先輩調査官が口にして、上席もうなずいた、「それは、臭うんや」ということだったのです。一度身についた勘とは恐ろしいもので、私は、調査官でなくなった今でも、名刺交換しただけで、「この人はやってるかも…」とわかるようになってしまいました。

実は多い、投書やタレコミ

 三つのステップを踏んで、実地調査対象に選ばれるのはご説明したとおりなのですが、実は、もう一つ別な流れで調査に選定される場合があります。それは、投書や「タレコミ」と言われるもの。つまり告発です。

 一般の企業において、クレーム対応やクレーム処理は大切な仕事の一つでしょう。国税当局への投書やタレコミの処理は、この一般企業のクレーム処理に似ています。いったん当局に寄せられた投書やタレコミは、どんなにつまらない内容であっても、実際の調査につながるかどうかは別として、100パーセント処理しなければなりません。投書やタレコミについては、会社経営者の元奥さん、元愛人、あるいは元右腕だった役員、さらに元従業員などから多く寄せられます。そして、これら内部事情に詳しい人からの情報は確かな場合が多いのも事実です。

「知り合いの社長が、何も悪いことをしていないのにマルサに入られたと言っていました。そんなことがあるのでしょうか」

 そんな質問を受けることもあります。これもひょっとすると、社長のごく近くにいた近親者や関係者が告発をしているのかもしれません。それまではとても近くにいて強い信頼関係で結ばれていた人に限って告発をするようになるのは、なぜなのでしょうか。

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