「このままアズニーとうまくいけば、夫との関係はもう終わってもいいとさえ思っていました。愛情を欲していたのかもしれません」
さらにアズニーからは、「息子は元気かい?」と、子供を気遣うメッセージまで届いた。この“優しさ”に心を鷲づかみにされてしまったと、香奈が回想する。
「私だけでなく、子供のことまでも考えてくれるのかと。夫とは子育てに関する話し合いがうまくいっていなかったので、アズニーに心を許してしまいました」
家族を気遣うメッセージは、国際ロマンス詐欺犯に共通する手口である。それによって被害者を安心させ、心の隙を探る意図があるとみられる。
100回弱もLINE通話
アズニーからはたまにLINE電話もかかってくるようになった。
「I love you!」
香奈はそれほど英語が得意ではないため、簡単な言葉を交わしただけだったが、電話で肉声を聞けたことで、相手への信頼度がさらに高まったと打ち明ける。
「電話は頻繁にかかってきました。ビデオ通話でも対面し、彼が目の前にいることで信用してしまったのです」
香奈がアズニーとやり取りを重ねた4か月間で、LINE通話の回数は100回近くに上り、時間は数分から、長いと10分以上に及んだ。
LINEでやり取りを始めてから2週間後、アズニーは「石油ガスの開発に携わっている」と仕事の話を切り出した。そして近く、米国内のある石油採掘現場に出張があり、それが終われば来日するというのだ。
高鳴る鼓動──。