新型コロナ感染症の感染症法上の分類が「5類」に移行となって1か月。公共の場における感染対策としてのマスクの着用が「個人の判断」に委ねられたことを機に、コロナ禍で長く続けてきたマスク生活を“卒業”した人もいるのではないか。一時は供給不足となり、高値で取引されたこともあった不織布マスクだが、最近では買い込んだために自宅に大量の在庫を抱えて困っているという声も聞こえ始めた。各家庭ではどのように対処しているのだろうか。フリーライターの吉田みく氏が、20代から40代の女性3人のケースをリポートする。
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マスク着用が個人の判断に委ねることを基本とする流れとなり、マスクなしで過ごす人、場所に応じて着脱する人などが増えつつある。以前よりも不織布マスクを使う機会が減ったことで、自宅のストックが減らない……という声も少なくない。
「手放せないから実家に送る」
都内在住の会社員・リナさん(仮名、34歳)は、自宅に大量にある不織布マスクのストックに悩まされていた。
「買いだめした不織布マスクはどうすべきなのか……。寄付も考えましたが、またマスクを手に入れるのに悩む時が来るかもしれないと思うと、簡単に手放す選択はできません」(リナさん)
リナさんの会社ではマスク着用は任意であるものの、今の段階では着用している人のほうが多いそうだ。毎日1枚は使う状況だから予備が欠かせないが、すでに自宅のストックは10箱近くあるという。消費するまで1年はかかりそうだ。なぜそんなにストックしてしまったのだろうか。
「コロナが5類に移行するとのニュースが流れ始めた頃、よく利用する通販サイトで不織布マスクが投げ売りされました。送料込み1箱100円ほどだったので、30枚入りを7箱ほどまとめ買いしたんです。あとは、デザイン的にしっくりこないなどの理由でつけなくなったマスクたちが家の中に散乱しています……。全部使い切るとなったら1年はかかりそうです」(同前)
処分したら安く購入した意味がなくなってしまうが、一人暮らしの部屋ではかなりの場所を取る……そんな状況に悩んでいる様子だった。
そこでリナさんが思いついた解決策は、近々、離れて暮らす両親のもとにマスクの在庫を“おすそ分け”することだそうだ。「実家においておけば必要な時に取りに行くこともできる」とのことだった。