「給料が少ないからこそ、結婚して夫婦共働きになれば生活に余裕が出る」──経済的に苦しい若者世代に結婚を勧める際に、よく用いられる理屈だ。しかし、独身研究家・荒川和久氏は、「夫婦共働きなら世帯年収が増える」という言説に異を唱える。日本の人口の半分が独身者となる「超ソロ社会」の到来を予言し、家族をはじめとするコミュニティのあり方を検討した近著『「居場所がない」人たち』が話題の荒川氏が指摘する、「共働き世帯」の現実とは──。
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メディアがよく使う図表で本当に事実と違うのでやめてほしいと思うものに、専業主婦世帯と共働き世帯の世帯数推移グラフがある。国の正式な白書でも「今や共働き世帯は専業主婦世帯の2倍以上ある」などという時によく使用されている。
しかし、この図表は正確ではない。なぜなら、この共働きの中には、週1回でもパートで働いた場合は共働き世帯に分類されてしまうからだ。勿論、パートも立派な労働だが、基本的には家計の収入の助けとして補助的にやっているもので、それはフルタイムで就業している妻とは別物だと考えるべきだろう。
実際に、共働き世帯をパートとフルタイムで分けたグラフが次の図である。
これを見ると、フルタイム就業の妻の割合は、実は1985年も2021年もほぼ3割で変わらない。勿論、専業主婦の割合は減っているが、減っている専業主婦の3割とほぼ同等である。この35年で増えたのはパート妻の共働き世帯であり、決してフルタイムの夫婦が増えたわけではないのだ。
最近の初婚夫婦は夫婦とも同い年の「年齢同類婚」の割合が増えている。実数が増えているわけではなく、「夫年上婚」の数が激減したために、構成比が増えているのである。同時に、「経済力同類婚」も増えている。つまり、年齢も年収も同レベルでの結婚が増えている。
これは、かつてのお見合いや職場結婚が減ったことによる影響で、知り合うきっかけが同類縁に絞られてきていることによる。
たとえば、夫の年収が300万円なら妻の年収も300万円で、夫婦あわせた世帯年収は600万円となる。実際、600万円あれば世帯年収平均レベルとなるが、「それだけあればなんとかなるだろう」とはいかないのである。