「夫の一馬力にならざるを得ない」現実
結論からいえば、こと結婚となると、望むと望まないとにかかわらず、結果として妻側の「経済力上方婚」(妻の年収より夫の年収が高い状態)にならざるを得ない場合が多い。
誰もが仕事を続けたい人ばかりではない。仕事より育児を優先したい人もいる。「会社の仕事なんて誰がやってもいい仕事。うちの子にとって親は自分たちだけ。子どもと過ごすかけがえのない時間を削ってまでやりたい仕事なんてない」と考える人もいる。人それぞれだ。
実際、0歳児を持つ母親は、以前より少なくなったとはいえ2015年国勢調査ベースでは61%が専業主婦になっている(育休なども含む)。
たとえ300万円同士で結婚した夫婦でも、妻が専業主婦になれば、世帯収入が半分になってしまうのである。結婚前は「夫婦共働きでいいよね」と合意があったとしても、結婚さらにはその後の妊娠出産子育てへの移行にあたって、どうしても夫の一馬力にならざるを得ない、そんな夫婦の実情がある。
これは是非の問題ではなく、現実の話である。
そういう現実をふまえるからこそ、婚活女性は「年収400−500万円以上」という条件の中で相手を見つけようとするのだが、実際に全国で400万円以上稼いでいるアラサー未婚男性がどれくらいいるかというと27%程度しかいないのである。東京ですら42%で過半数に達しない(2017年就業構造基本調査)。
そもそも、その年収以上の未婚男性は婚活の現場にくることなく売約済みとなっている。つまり、婚活しても「いい男がいない」と感じてしまうのは、そもそも条件にあう男が存在しないからだ。
かといって、今の低年収の未婚男性の年収が上がるまで待っていれば、当然の帰結として未婚女性たちの結婚も後ろ倒しになる。
【プロフィール】
荒川和久(あらかわ・かずひさ)/広告会社にて自動車・飲料・ビール・食品など幅広い業種の企業業務を担当したのち独立。ソロ社会やソロ文化、独身男女の行動や消費を研究する「独身研究家」として、国内外のテレビ・ラジオ・新聞など各種メディアに多数出演。著書に『超ソロ社会』(PHP新書)、『ソロエコノミーの襲来』(ワニブックスPLUS新書)などがある。
※荒川和久『「居場所がない」人たち 超ソロ社会における幸福のコミュニティ論』より一部抜粋・再構成