世界でも充実しているとされる日本の医療制度だが、もしも公的制度の利用を認めてくれない医療機関にかかってしまった場合、どうすればいいのだろうか。実際の法律相談に回答する形で、弁護士の竹下正己氏が解説する。
【相談】
私は後期高齢者で、医療機関にかかるときに、保険証と一緒に標準負担額認定証を提示しています。ところが、近所の皮膚科は「うちはそういうことはやってません」と言って受け付けてくれません。そこはいつも混んでいるので、それ以上問い詰めていません。 区役所に聞いたら、「そんな医療機関があるなんて信じられません」というだけです。受け付けてくれないことは法的に問題ないのでしょうか。東京都・金田はるみ(75才・主婦)
【回答】
「標準負担額認定証」とは「限度額適用・標準負担額減額認定証」のことです。後期高齢者に適用される高齢者医療確保法の施行規則では、被保険者の申請に基づき、収入に応じ「限度額適用認定証」または「限度額適用・標準負担額減額認定証」が交付されます。
「標準負担額減額」とは、入院時の食費などの負担の減額に関するもので、治療費については「限度額適用認定証」が必要となります。
被保険者は、診療を受けると診療費の一部を自己負担金として窓口で支払います。しかし、医療費が高額になり、収入等で区分して算定される自己負担限度額を超えると、超えた部分が高額療養費として後から被保険者に対し支給されます。ところが、その支払いまでに数か月を要します。
そこで、高額療養費の支給を後から行うのではなく、現物としての医療で行う制度として「限度額適用認定証」が使われます。診療を受ける際、保険証に添えて認定証を医療機関窓口に提出することで、最初から自己負担額の限度の支払いで足りるようになります。
皮膚科がその取り扱いを拒否したとのことですが、保険医療機関である以上、定められた療養担当規則を遵守しなければなりません。
1回限りの診療で治療が終わり、自己負担額が限度額に達しない場合でも、療養担当基準に従って懇切丁寧に療養の給付(診療)を行う義務がありますから、その皮膚科の対応はずいぶん乱暴です。