スタートアップで起業をするに当たって、ベンチャーキャピタル(VC)などから資金を借りるケースがある。将来的に大きな利益が出るようになれば、そこで借りた資金も返済できるが、思うように成長しなかった場合は、悲惨なことになる。そうした中で、自身も会社を起業した経験があるネットニュース編集者の中川淳一郎氏は、「無借金経営で本当によかった」としみじみ実感しているという。中川氏が自らの経験を踏まえて、起業のあり方について考察する。
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5月15日、はてな匿名ダイアリーに書き込まれたエントリー〈スタートアップという蟻地獄で死にゆくザマ〉が一部で話題となりました。これは、約10年間スタートアップ企業の代表をしてきて、もう限界に達したという経営者が書いたもの。ベンチャーキャピタルから追い込まれていく様子や、部下が去っていった経緯などが記されています。
〈ベンチャーキャピタルは仕事だからさ、仕方ないんだよ。回収しないと損失になるから。だから半分、苛立つ事もわかるんだ。でも、追い詰めて追い詰めて、能無しとか信頼できないと言われ続けた先には俺は明るい未来は見れなかったよ〉
カネを貸す側はより大きなリターンを目指すため、投資先である企業の経営にも色々と口を出してくるのでしょう。それは当然のことですし、業績が悪いとそういう事態に拍車がかかることは目に見えていたはず。
では、そうした事態を避けるためにはどうすればよいか。もちろんベンチャーキャピタルが入れば、創業当初の事業資金に苦しまずに済むため、事業拡大に邁進することができます。そのままうまくいけば、借りた資金を返済できるどころか、創業者は巨額のリターンを得ることもできるでしょう。ただ、人からお金を借りていると、そのプレッシャーは並大抵のものではありません。
そういったプレッシャーがあるからこそ頑張れるという人もいるでしょうが、私は真逆のスタンスでした。最初から一切カネを借りずに、プレッシャーの少ない中で起業しました。そして起業して15年目になる今、「あぁ、あの時、カネを借りないで本当によかった」としみじみ思うのです。