昨今、「FIRE(Financial Independence, Retire Early)」という言葉が注目を集めている。若いうちから資産形成して「経済的に自立」して「早期リタイア」を実現する、という意味だ。ネットニュース編集者の中川淳一郎氏(47)は、2020年夏にそれまで続けていた多くの仕事を整理して、現在は佐賀県唐津市に移住し「ストレスのない範囲で適度に働く、快適な生活」を送っているという。中川氏はいかにしてそうした生活を手にしたのか、自身の経験を振り返る。
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私は2013年以降、「2020年、47歳の時にセミリタイアをする」と言い続け、2020年8月31日をもってそれを実行しました。「セミリタイア」の意味としては「定期的に職場に行くなど、がっつり関わっていた本業は辞めて、それ以外の偶発的な仕事はやる」というものです。
だから、厳密には「FIRE」ではありません。強いて言うなら「プチFIRE」といったところでしょうか。相変わらず仕事はしていますが、仕事量も収入も激減しています。この生活を選んだ正直な理由は、「過度に働く人生はもう47歳までやったからこれ以上はイヤだ。適度に働き、快適な生活を送りたい」と考えたからです。
さて、「FIRE」といえば、若いうちにお金を貯めることができた人が実践するもの、というイメージがあるでしょう。まぁ、それはそうです。やはり先立つものがなければ、セミリタイアすらできませんから。その際に大事なのは、そのお金をいかにして手に入れるか、です。
そんな私も、今のような状況になるまでには、色々と諦めたことも多いんですよ。
最初は新卒で広告会社に入社したわけですが、まず「会社員として安定した仕事を定年まで続ける」ということができなかった。私みたいなスーダラな人間が、定年まで仕事を続けるのはキツいだろうな……と、サラリーマンからフリーランスになりました。そうなると、次のような事実に直面します。
「フリーランスは社員より収入が少ない人がほとんど。一方で、少数派だが社員よりも稼げる人もいる」
私はこの後者たる「社員よりも稼げる少数派」を目指しました。もちろん上場企業の役員報酬なんかとはレベル違いますが、20代後半の会社員時代から、早くお金を貯めるにはフリーがいいかな、と思っていた次第です。実際、フリーランスとして社員時代より稼げるようになったものの、そこまでの過程で私は以下の3点を諦めました(最初から求めていなかったものもありますが)。
【1】マイホーム
【2】子供
【3】社会的信用