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中川淳一郎のビールと仕事がある幸せ

「スタートアップという蟻地獄」に苦しむ起業家を見て実感する「無借金経営でよかった」

豪華1周年パーティーなんて必要ない

 私は、そういった状況になるのが、とにかくイヤだったのです。だから、会社を立ち上げた時は、月額11万2000円のオフィスで社員と机を並べていました。オフィス用品もなるべくお金をかけたくないため、知り合いが使っていた事務机や椅子を譲ってもらいました。いくら年商が上がろうともこのスタイルは変えていません。

 私の周囲でも起業する人がいますが、その業種は、不動産業や広告制作会社、会計事務所、アプリ開発会社などで、基本的に「人」が財産なのだから、装置に潤沢なカネを使う必要はないと思うのです。にもかかわらず、やたらと立派なホームページを作ったり、1周年記念パーティーに寿司職人を呼んだりすることにカネを使う人がいる。

「これも必要な投資だ」という考えなのでしょうが、せっかく無料で使えるブログ・note・ツイッターがあるのですから、わざわざホームページを作らなくても、まずはこれで十分。自社の1周年なんて、内輪で居酒屋で祝っておけばいい。とにかく見栄を張らないことです。

 そんなこんなで15年間、無借金で会社を続けてこれたのは、見栄を張らず、分不相応な贅沢をしなかったからで、自分にとってはこれが正解だったと思います。ベンチャーキャピタルからの追い込みに苦しんでいる起業家の話を読んで、あらためてそう感じた次第です。

【プロフィール】
中川淳一郎(なかがわ・じゅんいちろう):1973年生まれ。ネットニュース編集者、ライター。一橋大学卒業後、大手広告会社に入社。企業のPR業務などに携わり2001年に退社。その後は多くのニュースサイトにネットニュース編集者として関わり、2020年8月をもってセミリタイア。著書に『ウェブはバカと暇人のもの』(光文社新書)、『縁の切り方』(小学館新書)など。最新刊は『捨て去る技術 40代からのセミリタイア』(インターナショナル新書)。

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