そんなカングーが、少しだけ大きくなってまずは本国で2021年に3代目が登場したのです。そして2年遅れたこの春、上陸してきたばかりのニューカングーを目の当たりにしました。全体のフォルムは大きく変わりませんが、これまで愛くるしい表情を作っていたアーモンド型のヘッドライトは細く切れ長なデザインとなり、印象はシャープにして高級感押しとなりました。同時にトヨタのアルファード並みに大きくなった全幅によって、押し出し感は強くなり、これまでのキュートさとは別の個性を求めているようです。
日本のユーザーだけに用意した「仕様」
届いたばかりの新型カングーに乗り込んで走り出すと、明らかに走りの感覚は上質になっていました。ガタピシという走りとは無縁の、乗用車として十分に通用する乗り心地なのです。先代までは「ちょっぴりツール感」があり、お手軽感を多少なりとも感じさせてくれるMPVでしたが、今度は見た目ばかりか乗り味までも少しばかりおすまししているのです。ボックス型で荷室が広いため、リアサスペンションからのノイズが少しだけ聞こえますが、ガタピシといったストレスになるレベルではありません。
これまでにあった商用車的な乗り味をほぼ感じさせることなく、「フランス車の乗用車レベル」まで向上させたのです。その上で最新のADAS(先進運転支援システム)装備を充実させてきました。走りということに関していえば、14年前に初めて乗った初代とは“隔世の感あり”なのです。なにより、フランス車の特徴である足のしなやかさと軽快感を、町中でもワインディングでも、そして高速でもしっかりと味わえることで、相当に満足していました。
そしてもうひとつの重要な実用面をみると、右と左のドアの大きさが違う観音開きのリアドアを、これまで同様に採用していました。狭いスペースでも開閉可能で、この点においては実用性をしっかりと維持しています。またスクエアで広々とした荷室、足元がさらに広くなったリア席など、スペースや実用性に関しては文句なし。アウトドアだけでなく、移動オフィスのような使い方、そして車中泊や商用的な使用など、アイデア次第でいかようにも対応してくれそうな頼もしさです。
そして今回、「イエローのボディカラー」と「キズにも強い黒バンパー」の組み合わせを選択できるようになっています。これはカングーが日本で高い支持率を維持している証明とも言えます。それは、この組み合わせは日本のユーザーのためだけに用意した日本専用仕様だからです。本国では選ぶことができません。