もはや「SUVでなければ、人気車になれない」と言われるほど、世界的にマーケットを急拡大しているSUV。いまやコンパクトクラスから、ロールスロイスといった超高級ブランドにも、SUVモデルが用意されるまでになっている。シリーズ「快適クルマ生活 乗ってみた、使ってみた」。今回取り上げるのは、SUVの「頂点の1台」とも言われる、ベントレー・ベンテイガの最高峰モデル「スピード」。自動車ライターの佐藤篤司氏が、車両価格3000万円オーバーのSUVに試乗してレポートする。
ますます充実する超高額SUVの選択肢
本来、SUVといえばトヨタのランドクルーザーやジープ・ラングラーなどといったオフロードの走行性の高さとボディの堅牢さを優先に考えた「クロスカントリータイプ」がメインでした。キャンプを始めとしたアウトドアライフやボードやサーフィンと言った郊外型ライフスタイルの普及率上昇とともに、こうしたタイプが人気となったわけです。
そんな流れが定着する一方で“もう少しソフトイメージで街乗りにも似合うSUVはないの?”という要望が出てきました。多様化の流れの影響もあり、ワイルドなイメージから少し外れたSUVを求める声が上がってきたわけです。そんな要望を察知して登場したのが「CUV(Crossover Utility Vehicle)」、最近では「クロスオーバータイプ」と表現されるSUVです。「高級サルーンの乗り心地とスポーティな走りなどオンロードでの快適性や走りを兼ね備えたSUV」が台頭してきたわけです。
この流れを作ったパイオニアといえば1997年に初代モデルが発売されたトヨタ・ハリアー。海外ではレクサスRXとして人気となり、走りだけでなくファッション性も備えた「高級クロスオーバーSUV」という新たなジャンルを開拓したのです。そして2002年にスポーツカーブランドのポルシェから「カイエン」が登場し、大成功を収めます。
この辺からクロスオーバーSUV市場には、世界中のメーカーから次々とニューモデルモデルが投入されます。メルセデス・ベンツやBMW、アウディといったドイツ勢、そしてジャガー、ボルボ、アルファロメオなどのプレミアムブランド、さらにはマセラティ・レヴァンテ、ランボルギーニ・ウルス、フェラーリ・プロサングエ、そしてロースルロイス・カリナンといった具合にスーパープレミアムブランドからも続々と登場しました。
このような、2000年代に入ってからのクロスオーバーSUV一択とも言える状況は「クルマ界の埋蔵金市場」であり、今も確実に成長を続けて行くはずです。今回のベントレー・ベンテイガの最強モデル「スピード」は、まさにその頂点にある1台とも言えます。ロールスロイス・カリナンの4258万円~、フェラーリ・プロサングエの4760万円~よりは少し安い3410万円~、ベーシックなモデルならV8型エンジンを搭載したモデルが2340万円から用意されています。地方都市の住宅事情で見れば、十分に新築庭付き戸建ても購入できそうな価格です。
ちなみに、少し前まで2000万円オーバーのSUVは数少なく、それだけでもスーパープレミアムと言われていました。ところが、このところ続いている超高額モデルのデビュー、たとえばメルセデス・マイバッハGLS 600 4MATICなども2827万円~といったように、あっさりと2000万円のボーダーラインを越えてきています。少々、金銭感覚がマヒしてしまいそうなのですが、ではこの価格のSUVが見せてくれる世界とはどんなものなのでしょうか。