件の列車はいったいどこへ消えたのか。CNNやロイター通信が2015年8月に報じた「発見か」のニュースには期待を持たせる内容が記されたが、翌2016年8月には「見つからず」とする記事がAFPから配信されている。
ポーランドの「黄金列車」探しは、ポーランド人とドイツ人のトレジャーハンター2人による独占だったが、今年のオランダの件は、国立公文書館が地図と文書を公開するや否や、多くのトレジャーハンターが殺到した。
帝国主義時代の発掘競争には「文化支配」の思惑も
トレジャーハンターが通常狙うのは、お宝満載状態のまま眠り続ける沈没船や海賊が無人島などに隠した埋蔵金、古代文明の栄えた地の地下にある未盗掘の有力者の墓などだ。考古学調査と重なる部分がないわけではないが、歴史的価値よりも金銭的価値に重きを置く点で大きく異なる。
近現代史に端を発する埋蔵金伝説といえば、崩壊した先述のナチス・ドイツやロマノフ王朝(帝政ロシア)絡みのものが群を抜く存在。「帝国の埋蔵金」ともなれば時価総額が大きいのはもちろん、大変な名誉ともなる。
「失われた帝国の埋蔵金」にはフィリピンの「山下財宝」も含まれる。太平洋戦争終盤、フィリピン防衛の司令官を務めた大日本帝国陸軍大将の山下奉文が隠したとされる埋蔵金だが、これには確たる証拠がない。フィリピンのジャングルで所有者不明の金塊などが発見されるたび、山下財宝ではないかと報じられ、日本から多くの報道陣が殺到。一時的ながら、現地に好景気をもたらすということが幾度となく繰り返されている。
埋蔵金伝説は日本国内にもある。そのなかでももっとも知名度の高いのが「徳川埋蔵金」である。テレビで何度も特番が組まれてきたのは、それなりの視聴率が見込めることに加え、スポンサーの獲得も容易で、企画も通りやすいからだろう。
徳川埋蔵金とは、1867年に大政奉還を迫られた江戸幕府が他日を期するために隠匿したと言われる金塊や大判小判のことで、現在の価値にして3000億円とも20兆円とも伝えられる。
むろん確たる証拠はなく、埋蔵金の存在自体を疑問視する向きもあるが、それでもなお人びとの関心は高い。埋蔵金探しという行為そのものや場所を特定する謎解きにロマンを感じているかのようである。