時代を映し出すのは当選品の変遷も同様だ。
「バブル期は現金1000万円や世界一周旅行、高級車プレゼントと、いま考えれば豪華すぎました(苦笑)。それがバブル崩壊で徐々に庶民的になり、リーマン・ショックが拍車をかけました。1万円分の金券が1000円分にトーンダウンした懸賞もたくさんあった」
時代ごとに変わっていくのは「金額」だけではない。賞品もまた時代のニーズに合わせて変容している。
「インターネットが普及すると、Amazonギフト券をはじめとした『デジタルギフト』が登場し、応募者の幅が広がりました。また、コロナ禍では旅行やライブ、お料理教室といったリアルなイベントのプレゼントがなくなり、おうち時間を満喫する空気清浄機やホットプレート、お肉1㎏などの食材が増えた。アフターコロナの現在はイベントや旅行のプレゼントが復活し、外れた人のなかから当たるWチャンス賞が以前より充実して、“もらえる”人の数が増えているように感じます」
コロナ禍で「新規参入者」が増加
世代の幅が広がれば、当然懸賞人口も増加の一途をたどることになる。
「私が始めた頃は応募方法がはがきやファクスだったので準備に手間も時間もかかるうえ、いまのように懸賞の情報をスマホですぐに検索できないこともあって応募する人が少なく、“出せば当たる”といわれました。しかし、新聞限定だった懸賞の告知がネットでも可能になるなど、規制緩和が進むとともに懸賞人口はどんどん増えている印象があります」
それに拍車をかけたのがコロナ禍だ。8年半ほど前から懸賞生活を始め、毎月の当選件数40件を誇る懸賞の達人・わこさんも「新規参入者の増加」を肌で感じている。
「コロナ禍からSNS懸賞をする人がすごく増えました。特に新米主婦や新米ママさんが『私もとうとう始めました』とSNSのプロフィールに書くケースが目立つ。コロナ禍で空き時間が増えたことに不景気や物価高も加わり、多くの初心者が参入してきたと実感します」
いまやはがき1枚で、スマホ1台で金券や賞品が当たる懸賞は立派な「投資」になっており、“懸賞生活”に憧れる人も少なくない。
「かつては“懸賞で当たった”と人に言うと『そこまでしてタダで欲しいの?』と鼻で笑われることもあったから、懸賞に励んでいても内緒にする人が多かった。だけど現在はマネー術として受け入れられ、ゲーム感覚で楽しみながら稼ぐ人も多いのです」(ガバちゃん)
そんな激動の懸賞業界を見てきた2人の達人たちに、「おすすめの懸賞」「避けている懸賞」「懸賞生活で大切にしていること」を聞いた。