ただ事実を伝えるだけ
中高生向けの進学塾で働くSさん(40代男性)のやり方は、“ただ事実を伝えるだけ”だ。
「ウチは春と秋に無料テストをやります。テストの翌週には保護者を呼んでテストを返却し、結果を伝えます。学校のテストでは、子供がなぜ間違ったのか、どこが理解できていないのかを保護者に説明する機会がないので、それを1つ1つ丁寧に説明することで安心感を覚えてもらうのが我々の狙いです。後はお子さんがどのあたりのポジションにいるのかを伝え、偏差値表を見せて“大学受験をするならこのレベルになります”と伝えるだけです」(Sさん)
今や大学に進まないほうが少数派。現実を知らせれば、“少しでも良い大学に”という親の思いが膨らんできて、入塾につながりやすいという。
最後に、子供向けのスイミングスクールで働くHさん(30代女性)の話。そのスクールは、あざとくも賢い方法を駆使している。
「すでに生徒になった子どもたちに、“お友達を連れて来てくれたら、アナタにも友達にもプレゼントをあげます”というキャンペーンを定期的にやっています。これをやると、子どもたちは競うように友達を連れて来てくれますし、“一緒に通おうよ”となる確率が極めて高いんです。
ただ定着するかどうかはこちらの努力次第。夏にキャンプを企画したり、秋にはスタッフ総出で運動会をやったり、生徒がきちんと楽しんでくれるようなイベントをたくさん用意しています」(Hさん)
セールストークには、業界によって、人によって、千差万別の種類がある。どんな商売にも通用する必殺フレーズなどそうそう無いということかもしれない。(了)