「ちりも積もれば山となる」。この言葉は、お金を貯めている人にも、貯まらない人にもあてはまる。貯まらない人は、無意識のうちにちょっとした損やムダをしていることが多いのだ。50才のときに貯金ゼロのわが身を憂い、思わず顔をしかめたという、女性セブンのライター“オバ記者”こと野原広子さんが、フリマアプリでついついお金と時間を使ってしまった体験を振り返る。
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一時期、ヤフオクにハマった。「落札」というシステムが楽しくて、来る日も来る日も、宝飾品の出品をチェックし続けたの。気がつくと2時間、3時間……。
貴金属ってただ眺めることが許されない商品じゃない? リアル店舗だとすぐに店員が張り付いてくるし。でもネットだと好きなだけ見られて、適正価格や相場もわかってくる。それで数千円の18金のピアスを落札したりして満足してたんだけど、ある日、とても魅力的なエメラルドの石にダイヤが巻きついているペンダントヘッドを見つけちゃった。
1万円から始まったオークションだから本物とは思わないし、「人工エメ」とちゃんと表記してあって、それならそれで気楽につけられる。そうこうしている間に値段は小刻みにはね上がって、気がついたときは私が1万8500円で落としていた。
で、届いた商品を見たら軽いなんてもんじゃない。なんと正真正銘のプラスチックのおもちゃだったのよ。頭にきて、「お手入れ方法を教えてください」と問い合わせたら、ウンともスンとも。メールが届かず返ってきてしまうの。ったく、詐欺というには細かいことをしているわと、しばらく怒りが収まらなかった。
あと、ヤフオクでいちばん買い集めたのがミシンだ。私は手芸が趣味なんだけど、何十万円の高級ミシンが1万円前後で売られているという信じがたい現実に狂喜乱舞して、これまた来る日も来る日もミシン漁り。
一時期は8台も買い集め、ヒマに飽かせてミシンに油を差したりして整備していたら、見かねた友達が売り先を見つけてくれて、1台2000円くらいの利益が出た。でも、送料に1200円かかったから、もう、何やってんだよという話。ちゃんと本業のライターの仕事をしろって話。
実は60才過ぎてから視界が狭くなってきたので眼科を受診したら、なんと初期の緑内障だって。金銭的に大損はしなかったけど、ヤフオクは取り返しのつかない膨大な時間と目の健康を私から奪ったの。