いまや共働き家庭は一般的になっているが、『中学受験 やってはいけない塾選び』などの著書があるノンフィクションライターの杉浦由美子氏によると、「中学受験で御三家などの難関校に合格する家庭は、専業主婦家庭が多くなる」という。その背景には何があるのか。「子どもを難関中学に通わせる家庭の収入事情」のレポート第2回。ここでは杉浦氏が、中学受験は300万円ほど費用がかかるため共働き家庭が主流になってきているのにかかわらず、御三家などの難関校に限っては専業主婦家庭がいまだに多い理由を考察する。【全3回の第2回。第1回から読む】
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現在、中学受験生の家庭は共働きが主流になってきている。いうまでもなく、今時、中学受験をさせるだけの経済力があるのは、共働き家庭だからだ。特に東京はその傾向が強い。取材先で関西出身の大手塾の経営者はこう話した。
「関西の受験生のお母様たちは子どもの教育費のためにパートに出ているという感じですが、東京はバリキャリのお母様が多くて驚きました。大黒柱が2本ある感じですね」
私立中学の生徒の家庭の40%は世帯年収1200万円以上だが、それは基本的に夫婦がフルで働いて稼ぎ出すものだ。夫が700万円で妻が500万円といった感じだ。しかし、御三家などの難関校受験ともなると様相が違ってくるという。前回、御三家などの難関校ほど、在学生を経済的に救済するための奨学金が充実していることについて書いた。今回は御三家などの難関校の生徒の家庭は、なぜいまだに専業主婦家庭が多いかについて言及しよう。
中堅校はバリキャリのママが多い
あるベンチャー企業勤務の女性には2人の子どもがいる。上の子は近所ののんびりした塾に通わせ、偏差値50台前半の中堅校に入学したが、下の子は本人の希望で大手塾に通って御三家に入学した。
「上の子の中学の文化祭や保護者会でお会いするママたちはバリキャリが多いです。勤務先が有名な会社ばかりで、私がちょっと引け目を感じてしまうぐらい。ママが忙しくて手をかけられないから、子どもを面倒見のいい学校に通わせるっていう雰囲気ですね。大学進学に対しても意外にガツガツしてないです。ところが下の子の学校……つまり御三家だと専業ママが多いのでびっくりしました。働いているとしてもパートや時短勤務という方が目立つ感じで、中学の入学時から東大か医学部へ進学させたいみたいな会話がされていています」
実際、ある御三家対策の塾を取材したら、担当者から「半分は専業主婦家庭のお子さん」という話も出てくる。