上場企業に限っても「トップは東大ではない」
気になるのは、日本を代表する国立大学である「東京大学」。2022年版では国公立大学としては最上位の10位(4244人)にランクインしたが、「東大なのに10位なのか」と思う人もいるかもしれない。坂田氏が解説する。
「上場企業に限れば、東大は慶應(288人)、早稲田(227人)に次ぐ3位(210人)で、決して東大出身の社長が少ないというわけではありません。しかし、東大の出身者が官僚、研究職などに進む割合が高いという傾向は、まだ変わらないとされています。また、東大を含めた国立大の順位が低いという結果は文系学部が中心の私大に対し、国立には理系学部が多いということも影響していると考えられます。国立の卒業生は一流とされる大企業に就職することが多いですが、今も日本の大企業では技術職が社長にまで辿り着くことは難しく、少ないとされています」
また今回の調査では「地域性」においても特徴が見られた。都道府県別で見ると日本大学が18都県でトップを占めたが、そのうち15都県が「東日本」だった。西日本で日大出身者がトップを占めたのは香川県、高知県、宮崎県の3県にとどまった。その代わりに近畿大学(7位、5826人)が大阪府、奈良県、和歌山県でトップ、福岡大学(16位、3126人)が福岡県と佐賀県でトップを占めた。日大以外で、複数県でトップになったのはこの2校だけで、西日本のほうが「地元大学出身社長」が多いことが窺える。
「東日本で日大出身の社長が多いのは、付属・系列校が東日本に多いことが影響した可能性が考えられます。一方、西日本は地元志向が強いという可能性が考えられます。また、人の動きも東京に向かう東日本と違って、西日本では東京だけではなく、大阪など関西にも向かうというように、人の動きが違うのかもしれません。そのうえで、西日本の中でも近畿は私立大学の数が多く、近畿以外では地元で有名な国立大学も多いので、東日本とは違った結果になった可能性も考えられます」(坂田氏)
調査が始まってから、おおよそ今回の順位に大きな変動は見られないという。しかし、コロナ禍で企業のあり方や産業構造にも変化が起きた。今後は、こうした社長のパーソナリティにも統計上の変化が見られるかもしれない。(了)